

2010年12月13日
世界有数の透明度を誇る北海道の摩周湖の森で、白樺の仲間である“ダケカンバ”が、謎の立ち枯れを起こしている。ダケカンバは、本州でも標高の高い森林限界付近に群落を作り、ギリギリの環境に生きる。それゆえ、変化に敏感で、環境のリトマス試験紙として注目されている。摩周湖の植物を地元で研究しているてしかが自然史研究会の細川音治会長は、寿命を迎えた木も中にはあるが、多くの木が立ち枯れしている原因はわからないという。立ち枯れの原因として、車の排気ガスが疑われ、行楽シーズンに関わらず、一時マイカーの乗り入れをやめ、てんぷら油の廃油で走るバスを運行した。噴煙を上げる山もあることから火山性ガスや樹木を食べ荒らす害虫、鹿の食害も疑われたが、いずれも可能性が低いという。そこで、町から依頼された大学や研究機関が原因を調べたところ、オゾン(O3)が影響している可能性が高いと指摘する。弟子屈町や北海道大学と共同研究している北海道立総合研究機構では、通常の空気とオゾンを除去した空気を流し、苗木の成長を観察している。野口泉研究主幹は、「オゾンを含んだ空気を流しているほうに影響が出ていることがわかってきた」と話す。地表付近のオゾンは、工場や車から排出された窒素酸化物(NOx)などが風に乗って移動する間に化学反応が起こり、太陽光などの影響で生成される。成層圏のオゾンは、有害な紫外線をカットしてくれるが、地表付近では注意が必要だ。適切に使用すれば、殺菌などの効果を出すが、大気中で高濃度になると光化学スモッグを引き起こす。東京農工大学(FM多摩丘陵)では、野外で観測されているオゾン濃度を1.5倍にして、植物に与える影響を調べている。ブナの葉の場合、高濃度のオゾンが掛かると、緑が薄くなり変色した。コナラの葉は、黄色に。そして、アカマツは、樹木そのものが枯れる寸前となり、植物の種類によって反応は違った。東京農工大学の伊豆田猛教授は「オゾンが葉の気孔から入って、それによって光合成を阻害されると、光合成産物の量が少なくなってしまう。根っこに行く光合成産物の量も少なくなるので、根っこの成長が低下する」と話す。
この時期の摩周湖周辺のオゾン濃度を調べてみると、0.02ppmだった。この値は、0.12ppm以上が続くようなら発令される光化学スモッグ注意報の値に比べると低かった。