

2010年12月15日
TPP=環太平洋パートナーシップ協定など貿易自由化の波に揺れる農業。そんな中、“輸出”に挑む日本のコメ農家を経済ジャーナリストの財部誠一氏が取材した。
コメどころ山形県・庄内平野にある有限会社『米シスト庄内』は、1998年、8人の専業農家により設立された。農協に頼らず、コメを直販している。100haの水田で、530tのコメを生産。売り上げは約2億円になる。2009年産米から、商社を通じ、コメの輸出を始めた。去年の輸出量は63t。今年は121tにまで増やす計画だ。条件の厳しい輸出に挑んだのは、減反政策に左右されないためだった。米シストの佐藤彰一社長(56)は、「『自分の持っている田んぼにすべて作付けをしたい』という感性を農家は絶対に持っている」と話す。これまで、減反分の農地では、大豆への転作が奨励されてきたが、雪深い庄内では、大豆の収穫量は少なく、タダ働き同然だったという。そんな中、2008年産から、輸出米の生産が減反分としてカウントされるようになった。主食用米の需要に影響を及ぼさないとする“新規需要米”としての扱いだ。ただ、輸出米は、加工米や飼料米と違い、補助金が出ない。『補助金に頼らず、減反分の農地でも、ご飯となるコメを作りたい』という思いから、米シストは、周辺の農家に生産を呼びかけた。収益を綿密に試算し、農家が損をしない買取価格を設定すると、徐々に賛同する農家が増えていった。最終的に19軒の農家が輸出米の生産に踏み切った。米シストと合わせて121tの輸出米を確保。米シストは、収穫後に収支の計算を行った。国内米価が下落したため、加工米(4000円)、飼料米(2100円)より、輸出米(6800円)の買取額が高く、補助金を含めた収益で見ても、加工米を上回った。輸出米121tのうち、約8割がフランスを中心としたヨーロッパ、2割がオーストラリアへ向かう。パリの老舗日本食材店に並ぶ日本米2kgの価格を見ると、カリフォルニア産が約1000円、魚沼産のこしひかりが約3900円。一方、米シストのひとめぼれは約1500円と、その値ごろ感から、他の日本米に比べ2倍以上も売れているという。米シストのコメを購入した人は「寿司を握るから、力強い味のコメが欲しくて。価格は妥当だと思う」と話す。
どのようにして、世界市場での標準価格に迫ったのか。