

2011年12月7日
『大切な人を亡くした悲しみを乗り越え、再び前を向いて歩き出した体験をお寄せください』。2009年、朝日新聞社は、亡くなった大切な人に届けたい思いを綴った手紙を募集した。国内外から5000通以上の手紙が集まり、『千の風になったあなたへ贈る手紙』と題する本になった。かけがえのない存在を失ったとき、人は悲しみや喪失感とどう向き合い、明日へと生きる希望を繋ぐのか。最愛の家族を亡くした応募者を取材。手紙に込めた様々な思いを聞いた。
青森県五戸町に住む福田千惠子さん(60)は、16年前に夫の高博さん(享年50)をがんで亡くした。小学校の教師だった高博さん。48歳のとき、大腸にがんが見つかり、手術を受けたが、2年後に再発。末期がんだった。高博さんは奇跡を信じ、抗がん剤治療に耐える一方で、3人の子どもたちに向け、25通もの手紙を書き遺した。成人までの誕生日ごとのバースデーカードや結婚するときのお祝いの手紙。そして、千惠子さんには、最初で最後のラブレターを遺した。千惠子さんは、現在一人暮らし。高博さんの死後、両親を介護し、3人の子どもを育て上げたのも高博さんが残してくれた言葉の数々だったという。
千惠子さんが高博さん宛てに綴った手紙『千の言の葉』
私たち4人、平穏順調にこの15年を生きてきた訳ではないこと、知っていますよね。悲しみの大波を受けた後だから、その後の中波小波をやり過ごせたのかなとも思うけど、それでも、それぞれのがんばりは、ほめてやってくださいね。子供たちと、ついでに私のことも。千の言の葉で、子供たちを導き、守ってくれてありがとう。千の言の葉で、私たちを幸せにしてくれてありがとう。今日も雪がちらついています。寒がりのお父さん、天国で暖かくしていますか。
『千の風になったあなたへ贈る手紙』集まった5000通以上の手紙の中から入選作品が選ばれ、授賞式が行われた。そこには、千惠子さんの姿もあった。今回の企画発案者であり、選考委員長は、ヒット曲『千の風になって』を手掛けた新井満さん。「大切な人を亡くしたとき、悲しみを乗り越えていくのは、難しいことだが、5060通の手紙の中に、ヒントがたくさんあった」という。
最高賞である選考委員長賞に選ばれたのは、東京都に住む西村拓人さん(24)の手紙だった。