

2011年12月8日
『東電OL殺人事件』から14年。1997年3月19日、東京都渋谷区のアパートの一室で、39歳の女性が遺体で発見された。死後10日ほどが経過していた。事件発覚から2カ月後、警察は、飲食店従業員のゴビンダ・プラサド・マイナリ氏(45)がバッグを奪おうとして抵抗されたため、女性を殺害したとして逮捕した。被害者の女性は、不特定多数の男性と関係しており、彼もその一人だった。犯行を直接結び付ける証拠はなく、ゴビンダ氏は否認し続けたが、最高裁で有罪・無期懲役が確定した。服役中のゴビンダ氏は、刑務所で日本語を勉強し、無罪を訴え続けている。『無実の罪で刑務所に入れられ、言葉にならないくらい苦しんでいます』『裁判をやり直してほしい』。
有力な状況証拠とされたのは、トイレに残されていたコンドーム内の精液がゴビンダ氏のものであったこと。そして、このアパートの鍵をゴビンダ氏が預かっていたこと。ゴビンダ氏は「鍵は事件前に返却し、被害女性と関係を持ったのは事件よりも10日前」と反論した。しかし、判決は「ゴビンダ氏以外が、被害者の女性をこの部屋に連れ込むことは考えがたい」と結論付けた。事態が動いたのは今年7月。再審請求のなかで行われたDNA鑑定の結果、被害者の遺体に残っていた体液は、捜査当局の把握していない男性のものだったことが明らかになった。ゴビンダ氏以外の男性が、犯行直前に被害者と関係を持った可能性が浮上してきた。それにも関わらず、検察は、有罪の構えを崩さない。『犯行現場に入れたのは、部屋の鍵を持っていたゴビンダ氏のみ』と主張する。確かにゴビンダ氏は、当時、空き部屋だった部屋の鍵を、引っ越し先を探す知り合いのため、管理人から借りていたが、その半年前までは、ネパール人が集団で生活していたという。本当に鍵は一つしかなかったのか。ネパールに行き、日本を訪れたことのあるネパール人一人ひとりを訪ね歩いた。
世界最貧国の一つとされるネパール。一人あたりの年間所得は、480ドル、日本円にして約4万円ほどだという。日本で1カ月働けば、年間所得の数倍を得ることができる。取材を進めるなか、犯行現場のアパートに住んでいた人物と会えた。彼は事件前に帰国したが、6年間ほど日本に滞在し、現場アパートにも半年ほど住んでいたという。アパートは6畳一間。そこで4、5人が共同生活を送っていたという。