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2012年11月27日

家族の思い胸に…青年農家の復興への挑戦

家族の思い胸に…青年農家の復興への挑戦

今も震災の爪あとが残る宮城県東松島市。その内陸部に新しく建てられたビニールハウスで、阿部聡さん(34)は、ミディアムトマトを栽培している。震災後、阿部さんが立ち上げた農業生産法人は、『イグナルファーム』と名づけられた。“イグナル”とは、“良くなる”という意味の方言。野菜を買う人、地域の人、みんなが“いぐなる”ようにという願いが込められている。

去年の3月11日、阿部さんは、農作業中に津波にのまれたものの、一命を取りとめた。しかし、妻の妙恵さんと3人の子どもたち、そして、祖母が津波の犠牲になった。家族も生活の糧である畑も失った。阿部さんは、毎日、死ぬことしか考えていなかったという。そんななか、ある夜、妙恵さんが、何も言わずに怒った様子で夢の中に出てきたという。阿部さんは「死ぬこと、マイナスのことしか考えないことに怒っていたと思う。仕事、家、家族、全部奪われたので、自分に何ができるかと考えた。何をするにも、仕事を取り返さないと前に進めないと思った」という。農家の4代目に生まれた阿部さん。もともとトマトやキュウリの栽培には定評があり、2010年には、トマトで宮城県知事賞を受賞している。『仕事ぐらいは取り戻したい』と阿部さんは動き始めた。しかし、震災直後の街で、個人で農業を再開するには限界があった。事実、多くの農家が、農業を諦めていた。そこで阿部さんが目指したのが、若い力を集めた“大規模農業”。震災前から夢を語りあっていた同世代の仲間たちに声をかけた。かつて、トマト作りのライバルだった武田真吾さん(37)にも声をかけた。武田さんは、すでに電気工事の仕事を始めていたため、最初は断ったが、阿部さんの熱意で思いが変わったと話す。「あの状況のなか、ちゃんと立っている姿を見て、もしかしたら、自分は農業から逃げているのではないかと思った」という。3人の仲間が集まった。次は、土地探しだ。4カ月にわたり、回った場所は30カ所以上。ようやく水田を格安で譲ってもらうことができた。ビニールハウスは、地元JAの事業に応募し、国の補助を得て建設されたものを借りることができた。今年5月25日、ハウスが完成。ところが、ここから正念場だった。3000坪という広大な敷地に、限られた人数で、2万4000本のトマトの苗を育てなければならない。夏の出荷まで、わずか2カ月。

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