

2013年3月21日
北海道北見市にある人口1600人という過疎の町・温根湯温泉。そこで今、奇跡的な再生を遂げた『山の水族館』が注目を浴びている。この水族館、実は、ほんの2年前まで閑古鳥が鳴いていた。市の中心から車で約1時間、しかも、雪深いこの土地を訪れる人はほとんどいなかった。去年7月にリニューアル。リニューアル前は、年間2万人だった客が、9カ月で18万人を突破した。その人気の秘密は、“世界初”の凍った川の下を再現した水槽や、“日本初”の滝壺の下を再現した水槽、天然のものは北海道の一部にしか生息していないと言われる“幻の魚”イトウの群れが見られる大水槽など、斬新な水槽の数々にある。過疎の町の希望となった水族館。その裏には1人の飼育員の情熱と奮闘があった。松岡修造が取材した。
10代までは魚と無縁の人生を送ってきたという飼育員の佐藤圭一さん(33)。地元の工業高校を卒業後は、建設会社に就職したものの合わずに辞めた。ある日、山の水族館の『飼育員募集』を見て、「魚の管理とは、どんなのだろう」と素朴な疑問を持ったという。ふとした疑問から飛び込んだ山の水族館。しかし当時、飼育員は、実質、佐藤さん1人だけ。ノウハウは何もなく、死なせてしまった魚も多かった。何が理由で魚が死んでいくのかわからず、図鑑や参考書を読み漁り、さらには、熱帯魚のショップにも聞きに行ったという。佐藤さんは、そのときのことを「自分一人しかいないので、絶対逃げ出したくなかった」と振り返る。当時の佐藤さんは、魚を飼育するだけで精一杯で、お客さんの声など耳に入ってこなかった。しかし3年がたち、余裕を感じられるようになった頃、お客さんの『魚がきれい』『わーすごい!』という声が初めて聞こえたという。「うれしくなり、“人々を喜ばせる水槽を作りたい”と強く思った」と話す。初めてお客さんを意識した瞬間だった。すると、2010年に転機が訪れる。老朽化した水族館をリニューアルする話が舞い込んできた。佐藤さんは、さまざまな水槽の案を考えるものの、お客さんが満足してくれるかどうか、不安が募っていった。そこで、佐藤さんは大胆な行動に出た。この世界の大御所、水族館プロデューサーの中村元さん(56)に協力を頼み込んだ。中村さんは、サンシャイン水族館、新江ノ島水族館など、数々の人気水族館を成功に導いてきた人物だ。
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