世界の車窓から

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秋の中央アジア3カ国 と中東ドバイの旅編 撮影日記

明け方、カスピ海に沿って走る
中央アジア最高の景色
トルクメニスタンの首都アシガバットからカスピ海沿岸の街トルクメンバシを目指し、夜行列車に乗り込む。ホームに溢れていた人たちはどこへ行ったのか。車内はしんと静まり返っている。隣の客室から珍しそうに我々を見ていた子どもたちも、しばらくすると眠りについたようだ。車窓に流れる風景もやがて闇に溶けて行く。
トルクメニスタンの旅では常に4人の同行者がいた。現地のテレビ関係者と鉄道省の役人たちだ。彼らは我々撮影隊のいわゆるお目付役。初めは少しやりづらいところもあったが、慣れてくると親しげに話しかけてきては、お茶を入れてくれたり車窓の風景を教えてくれたり、何とも気の良い青年たちだ。
どれくらい時間がたっただろうか。仮眠をとっていた私を呼ぶ声が。鉄道省の1人が窓を指差している。見ると窓には相変わらずの黒い闇…。いや違った。目を凝らしてみると、遠くにうっすらと海が見える。カスピ海だ。約500万年前、地殻変動により生まれた世界最大の湖。太陽が海面を照らし始め、その存在感が増していく。反対側の車窓には、海底から隆起して出来た岩山がそびえる。めまぐるしく変化する奇怪な形をした岸壁。絶景だった。砂漠の広がるトルクメニスタンで、こんな景色が見られるとは。ガイドブックからは想像し得ない、圧倒的な美しさ。
列車は終点トルクメンバシに到着。小さな街ではあるがこの国唯一の港町であり随一のリゾート地。とても活気に溢れている。トルクメンバシは「トルクメニスタンの長」という意味。初代ニャゾフ大統領が直々に命名した。ここが国の誇るべき街だという事が伺える。現地では警察関係者など総勢6名が出迎えてくれた。私がカスピ海と岸壁の間を走る列車を撮りたいと申し出ると、心当たりはないようだったが親身になって探してくれた。車5台を引き連れての大捜索の末、ついに見つけた。そこは地元の人も知らなかった絶景ポイント。奇岩奇勝の山々、穏やかで雄大な海。思わず歓声があがる。中央アジアの旅最後にして最高の景色。素晴らしい撮影が出来たと告げると、トルクメニスタンの長たちは誇らしげな笑みを浮かべていた。中央アジア3カ国、素晴らしい旅を味わう事が出来た。協力してくれた現地の全ての皆さまに感謝する。
ディレクター 廣澤 鉄馬
トルクメンバシの市場
トルクメニタン随一のリゾート地