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秋の中央アジア3カ国 と中東ドバイの旅編 撮影日記

車窓には天山山脈と草原が広がる
遊牧の民カザフの誇り
実に番組20年ぶり2回目となる、中央アジア・シルクロードを辿る旅。
舞台は、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンの3カ国。スタンとは、ペルシャ語で土地や国を表す言葉で、それぞれカザフ人の国、ウズベク人の国、トルクメン人の国という意味がある。スタンと名が付くと何となく物騒な感じがしてしまうが、この3カ国に関してはとても治安が良い。いずれも1991年のソ連崩壊後に独立し、豊富な地下資源により発展してきている国々だ。
さて、旅はカザフスタン最大の都市アルマティから始まる。この町は独立当時の首都で、1997年にアスタナに遷都された後も経済・文化の中心地としての役割を担っている。カザフスタンと言えば草原や砂漠を思い浮かべる人も多いと思うが、ここアルマティの町に立つと、そのイメージはかき消される。天山山脈の雪解け水が町中を流れ、通りには紅葉づいた樹々が立ち並ぶ。年間を通じて雨が多く、初日も残念ながら傘を持ちながらの撮影となったが、前日まで嵐のような天気が続いていたようなので、一応は幸先良しとしよう。
アルマティから西へおよそ750キロ、南部交通の要衝シムケントへと向かう。しばらく木漏れ日の中を進んでいたかと思うと一転、車窓は黄土色の草原と遠くに天山山脈が連なる雄大な景色へと変わる。
カザフスタンは近年、日本の建築家・黒川紀章氏(故)が設計した首都アスタナの超近未来都市が話題となっているが、乗客たちは口々に「この遊牧の大地こそ我々の誇りだ」と話してくれた。大地は万物の始まり。国によってはそれが太陽だったり海だったりするが、カザフスタンでは大地なのだと。同時にそれは遊牧民カザフ人への敬意でもあり、特にカザフ人の言語、カザフ語に対する誇りも強い。国が発展していく中に、しっかりと息づく人々の自国への誇り。中央アジアを巡る旅の大きなテーマとなりそうだ。
ディレクター 廣澤 鉄馬
シムケントに向かうおじいさんと女の子
旅の出発地アルマティ