世界の車窓から

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秋の中央アジア3カ国 と中東ドバイの旅編 撮影日記

首都タシケントからフェルガナ盆地を目指す
ウズベキスタン鉄道の隠れた魅力
カザフスタンのシムケントから国際列車に乗って、ウズベキスタンへと入る。列車での国境越えは番組では何度か紹介しているが、残念ながら今回は、国境付近の警備が非常に厳しく、撮影する事は許されなかった。入国手続きの為、部屋で待っていると、シェパードを連れた数人の軍人が列車に乗り込んできた。ピンと空気が張りつめる。とんでもない緊張感。意外だったのは、軍人のリーダー格が女性だった事。威厳のある凛とした振る舞い。首都タシケントに着き、駅でチェックを受ける際も、警備員に指示を送るのは女性が多かった。イスラム世界での女性の人権問題は長年のテーマになっているというが、私の見る限り、むしろ女性の活躍が目立っていた。
ウズベキスタンは内陸国で囲まれた「二重内陸国」。世界で2つしかない珍しい環境にある国だ。東部は高い山脈が連なり、フェルガナ盆地を形成している。そこはウズベキスタンとタジキスタン、キルギスにまたがる豊かな穀倉地帯。かつては都市部への穀物輸送や人の往来は、山脈を避けて通っていたが、ソ連崩壊後、そのルートではタジキスタンを経由しなくてはならなくなり、大変な不便を強いられていた。2016年に山脈を抜ける路線が開通し、国内輸送が可能となった。この路線は今回最も楽しみにしていたひとつで、恐らく日本のテレビ初公開ではないだろうか。
山脈を抜ける車窓は、見ごたえ十分。陽光にきらめく人工湖、川沿いに切り立つ岩山、様々な形に変化する砂の丘陵、雪に覆われた山の頂き。峠を越えると、黄土色の砂山の下に緑の樹々が広がる不思議な景色が目を楽しませてくれる。
中央アジアでは鉄道にエンターテインメント性を求める発想が薄い。その為、他国のように観光列車も蒸気機関車も走っておらず、乗務員に聞いても「わざわざ列車で景色を見る必要もないし、古い列車に乗る意味もない」とばっさり。でも私からするとこの路線は観光列車に値する。ウズベキスタンでフェルガナに行く際は、是非おススメする。
ディレクター 廣澤 鉄馬
タシケントとフェルガナ地方をつなぐウズベキスタン号
ウズベキスタン号の車窓