チェコ・スロバキア編 撮影日記

- 回転台に乗って車庫に入る機関車
- 蒸気機関車が繋いだ絆
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ボヘミア地方を巡り終えると、旅は再びプラハへ。ここでチェコの鉄道ファンが待ちかねた蒸気機関車のイベントを撮影する。
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土曜の朝8時、プラハ・マサリク駅に蒸気機関車が到着した。やってきたのは、555型という大型の蒸気機関車。戦時中ドイツで大量に生産された52型蒸気機関車が、1960年代に旧チェコ・スロヴァキア共和国に売却されたあと555型と名前を変え運用される様になったそうだ。普段はプラハ近郊、ルジュナーの鉄道博物館に展示されているものでこの日は特別に運行するのだという。駅では、朝から大勢の鉄道ファンと子連れの家族が待っていた。やはり、どこの国も変わらず鉄道ファンは熱い。機関車の至るところにカメラを向けている。我々、撮影隊も負けないようにせねば…。
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鉄道博物館を目指す車内。子どもたちは機関車のおもちゃを持っていたり、煙が目に入らないようにサングラスを掛けていたり、さらには、車掌の娘も鉄道員の服を着て手伝っていたりする。これは、子どもの画が十分に撮れる…だからこそ、子連れ以外の人に目を凝らす。他の列車内の撮影では、画になる子どもを探してしまうのだが、この日は逆だった。
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一際、私の目を惹いたのは、仲が良さそうな二人のおじいさん。なんでも、二人はドイツ人とイギリス人の友達同士で、この鉄道イベントに来るためにチェコまで旅行に来たのだそう。なんだか嬉しくなって深く話を聞いていると、1枚の写真を見せてくれた。そこには、今より少しだけ若い、機関車を運転するドイツ人のおじいさんの姿があった。15年前、ドイツで開かれた蒸気機関車のイベントで二人は知り合い、友達になったのだそうだ。ドイツ人のおじいさんが、「戦争のときは敵国だったけど、今はこうやって友達になれたんだよ」と誇らしげに語っていたのが忘れられない。
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鉄道博物館に到着すると、無数の機関車たちが私たちを出迎えてくれた。何でも30台以上の蒸気機関車が、ここには保存されているそうだ。何台もの機関車が、一斉に黒煙を吐く姿はまさに圧巻!気づけば誰もがその姿にみとれ、夢中でシャッターを切っていた。わずか半日ほどの小さな旅であったが、様々な人間の熱さに触れた濃密な時間だった。
- ディレクター 小峰 康平

- 一斉に黒煙を吐く機関車

- 身を乗り出し撮影する鉄道ファン