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 2003年3月31日、日経平均株価が1982年以来21年ぶりに8000円台を割り込みました。イラク戦争が長期化すれば、更に景気は落ち込むということです。世界銀行はこんな警告を発しています。「欧米は回避可能だが、日本はすでに危険な水準を相当越えた」と。一体、日本経済はいつ回復を見せるのでしょうか。
 日本の全ての企業数485万。そのうち中小企業といわれる企業数は483万。つまり、日本の企業の実に99.7%が中小企業なのです。日本の工業を、そして日本の経済を支えているといえる中小企業ですが、毎年、実に1万8000件、月に1500件ものペースで倒産に追い込まれています。中でも特に深刻なのが製造業。近年、大企業が人件費の安い海外に生産の場を移したことで、窮地に立たされているのです。事実、 町工場の数はこの10年で20%以上も減少しています。都内で最も町工場の多い、日本有数の工場地帯――東京都大田区。ここには、実に6000もの町工場があり、 5万人が働いています。しかも、ここ大田区には、「ここだけにしかない技術」を持ち、世界に羽ばたく町工場が無数に点在しているのです。そんな小さくても元気のある町工場を、香取慎吾編集長が訪ねました。
 まず最初に香取編集長が訪れたのは、東京都大田区本羽田の「日本エッチング」。従業員数65名のこの工場では、特殊な薬品を使って、プラスチック製品の表面に微妙な模様をつける加工を行っています。金型の表面に模様のパターンをつけ、特殊な薬品に漬け込むことで、プラスチック製品の表面に模様をつける原盤が出来るのだとか。この技術により、単純な砂状の模様から幾何学模様など、あらゆる加工が可能となるのです。「この技術は、マニュアル本を見ても出来ません。何年もかけて技術を身につけるんです」と同社スタッフ。プレステ2の表面も、「世界一」とスタッフが断言する同社の技術が使われていることを知った香取編集長は、驚きを隠せません。
 次に向かったのは、本羽田二丁目工場アパート。工場と住宅が調和する町を目指す大田区では、防音や振動対策に配慮した賃貸型工場、いわゆる工場アパートの建設、管理を行っているのです。工場と住宅との共存という他にも、工場が集まることで共同開発などを進めることが出来る、というメリットもあるそうです。編集長は、そうした会社のひとつ「ツクモエンヂニアリング」に入りました。ここで作られているのはデジタルビデオカメラ内部のテープを正しく走行させるパーツ。いわばデジカムの心臓部です。世界中で使われる部品が、この従業員18人の工場でつくられているのです。しかも全て手作業。このツクモエンヂニアリングのように、大企業の下請け、孫受けといったこれまでの中小企業のあり方ではなく、独自の技術とアイディアで世界に進出する従業員10数名規模の「小さな世界企業」が日本には300社もあるのです。
 東京都・三鷹市「三鷹光器」。ここで作っているのは脳外科手術で使われる顕微鏡。
細部の部品まですべて人の手で作り、従業員30人で世界シェア60%を誇ります。世界的カメラメーカー「ライカ」との共同開発で生まれた世界的商品。「不景気は、よそのメーカーがいいものを作らないから。ここでは学歴も資格も必要ないんです」と同社社長は話しています。スペースシャトルの特殊モニターをはじめ、数々の宇宙関連機器の製作も得意とする「MITAKA」は海外に名だたるトップブランドなのです。
 神奈川県・平塚市「根本特殊化学」。特殊な物質を焼いて作っているのは夜光塗料。「理論も大事だけど、経験も大事。技術あっての現在の地位だと思っています」とは役員のコメント。さまざまな商品に活用されている根本ブランドの塗料は、最近では100ドル札や、ユーロ紙幣の特殊塗料としても採用されるなど、まさに小さなグローバル企業なのです。世界17カ国で特許を認められ、従業員92人で世界シェア60%は驚異的です。
 川崎市・宮前区「ミクロメディカル」。この工場は、従業員8人で世界シェア75%を記録する驚きの企業。作っているのはレントゲンの際、X線を狙ったところに当てる装置。
研究を続け改良を重ねることで、進出してきた海外巨大企業をも圧倒。不動の地位を得ました。
大阪府・東大阪市「ハードロック工業」。従業員30人のこの工場からは、決して緩むことのないナットが世界中に輸出されています。世界一厳しいNASAの基準をクリアし、なんとスペースシャトルの発射台にも採用されているそう。現在このナットは、新幹線、瀬戸大橋、原子力発電所など、さまざまな巨大建造物に使われています。
 大阪府・東大阪市「澤田光学」。従業員ひとりのこの工場は築100年。ガラスレンズに金属の膜をつけ、特殊なレンズを作っています。その腕を見込まれ、大手企業から人工衛星のアンテナ作りの話が舞い込みました。「難しいほどファイトがわく」という社長が作った4つのアンテナは、いまも2つの衛星に積まれ、日本の上空を飛んでいるのです。
 静岡県・浜松市。「大学産業」。従業員29人のこの会社が作っているのは、災害時、河川の水などを簡単に飲み水に出来る浄水器。「売れるものを作らない」がモットーの同社の製品。1時間に2トンの飲料水を作る抜群の性能は、国連や各国軍隊も高く評価しています。
 続いて、香取編集長が訪れたのは「安久工機」。この小さな工場では主に人工心臓の開発をしています。親子2代で日本の人工心臓開発を支えているのです。従業員たった7人のこの町工場に、海外からの注文が舞い込みます。更に、人工心臓だけでなく、廃水中の油を溶かし、飲み水にしてしまう装置の開発にも成功しているのです。「将来の夢は?」は編集長に問われた息子の田中隆さんは「大田区メイドの、世界に出て行けて、人の役に立つモノを作りたい」と力強く答えてくれました。
 不景気と言われる中、頑張ってるニッポンの町工場。日本経済を変える原動力はこうした小さな工場から生まれるのかもしれません。
――今回の「カトリが行く!」は世界に羽ばたく大田区の町工場がテーマでしたが、実際に行かれてみていかがでしたか?
 「世界に誇れる技術ってどういうものか」とか「不景気って何だろう?」とか、いろんな思いがあったんですけど、あの後家に帰って思ったのは…自分、ビデオとかカメラとか好きなんで、そういうのを見た時に「この部品、あそこで作ってたんだ」とか考えると、モノの大切さとか、そういう方向に行きましたね。単純に見た目が良くって買ったものとかもたくさんあるんですけど、そういうものも、何人もの手によって作られているわけで、それはわかってるつもりだったけど、実際にいろんな工場に人たち会って、改めて実感したというか…。

――見ていて、何だか凄く元気をもらったような気がしました。
 そうですね。見たことがない勢いとか、内に秘めた思い、未来に向かって突き進んでいく感じがあって…。ここ何年も日本はスゴイ不景気だって言われてて、これからどうなってしまうんだろう、っていうのがボクの中ではここ何年も気になってたんですけど、大田区っていう日本にとって重要な街で聞いてみると、みなさん凄く勢いがあって…。「世界一だ」って言えるの、スゴイですよね。「香取慎吾は世界一か?」って言われたときに、あそこまで胸を張って言えるのか。ボクのホームグラウンドであるSMAPで考えても、「SMAP世界一か?」って聞かれて、「世界一です!」って胸を張れるのか、っていうところで、あの方が「世界一です!」って言った感じが、とにかくカッコ良かった。だから、逆に大企業の人たちにも会ってみたくなりましたね。大手の会社で働く人たちの思いとか。そこにはきっと、彼らなりの信念とかもあると思うし…。

――次回は京都編ですが、見どころは?
 最大の見どころは…カッコいいですよ、日本って。「オレ、この国に生まれた日本人なんだな」とか「日本人ってカッコいいな」とか凄く感じた。いままで、アメリカとかヨーロッパの文化とかを見て、「スゲエな」「規模が違うな」って思うことがあったけど、それと同じ感覚を味わえた。日本なのに日本じゃないみたいなところも見ることが出来たし。衝撃は…金閣寺。ヤバイですよ(笑)。
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