

2010年1月26日
大阪市にある日雇い労働者の街として知られる釜ヶ崎。去年の大晦日、炊き出しに集まった数多くの失業者の中に若年層が目立つようになった。いわゆる派遣切りにあうと、一気にホームレスに転落する人が多く、24時間営業の店で夜を過ごす。こうした失業者を救済するため、去年6月、『大阪希望館』が誕生した。住まいを失った人に寝場所を提供して、就職するまでを支援するのが目的だ。野宿生活になる前に駆け込めて、再出発できるこのような民間の取り組みは、全国でも新しい試みだ。大阪希望館の事務局次長・沖野充彦さんは、釜ヶ崎で20年以上、ホームレスの支援活動をしてきて、ホームレスの路上死をいくつも見てきた。沖野さんは、「“民間のセーフティーネット”を作らなければいけない」と大阪希望館を立ち上げた。現在、支援を受けているのは8人。入居者には、アパートの1室が無料で提供され、食費代として1日1500円渡される(貸与)。生活費は、自分で稼ぐのが原則となっている。希望館の運営資金は、NPOや労働組合、宗教団体などの寄付によって支えられる。
この希望館で再出発を目指す一人の失業者の生と死を見つめた。
去年8月、伊藤隆昭さん(仮名)は、希望館に入居した。伊藤さんは、自動車の部品工場で働いていたが、1年前、派遣切りにあって寮を追い出され、決まった住所がないため、雇用保険の申請が出来なかった。しばらくはネットカフェにいたが、所持金が底を尽き、3週間、淀川の河川敷などで路上生活を送っていた。伊藤さんは「冬だったら死んでいたかもしれない。助かった」と話す。伊藤さんは、父親の会社の経営悪化で、小学生の頃から新聞配達をして家計を助けていた。定時制の高校に通っていたが、学費が続かず中退。伊藤さんは、毎日、希望館からハローワークに通うが、応募できるのは、学歴を問わない職に限られてくるため、就職口が見つからない。そんな伊藤さんに、沖野さんはフォークリフトの資格を取ることを勧めた。臨時的な仕事だと、就職しても不安定な生活が繰り返されてしまう。スキルアップして、出来るだけ安定した職を目指すのも希望館の目的だ。伊藤さんは、雇用開発機構が行っている職業訓練所に通い、資格を取得した。貯金もなく、これまでその場しのぎの職に就かざるをえなかった伊藤さんに、そこから抜け出すチャンスが初めて与えられた。仕事は運送作業。