

2011年6月7日
東日本大震災から約3カ月。岩手県大槌町では、復興に向けた作業が着々と進んでいる。しかし、災害で心に傷を負った人は少なくない。そんな被災者の心のケアにあたる精神科の医師・森川すいめい医師(38)に宮嶋泰子アナウンサーが密着。心理的ショックを受けている被災者にとって、いま、何が必要なのか考える。
仕事場である東京を離れ、NPO法人『世界の医療団』から派遣される形で大槌町の避難所を回る森川医師。この日、森川医師は、夫と一人娘を目の前で津波にさらわれた女性を訪ねた。女性は「最初の1カ月くらいは捜索隊のご飯炊きなどをやっていた。そのときは無我夢中で、自分の娘のことも父さんのことも考えている暇がなかった」と話す。しかし、「娘が見つかったのが四十九日の日だった。49日間海の中にいたことを考えたら鳥肌が立って、震えが止まらなくなった。全然記憶にないが『このままおかしくなるのではないか』と思うくらい変だったと言われた」という。そして「一緒に死んでしまったほうがいいのかと思ったときもあった」と涙ながらに森川医師に語る。被災者の言葉に耳を傾ける“傾聴”は、長いときには2時間を超える。森川医師は、助言や判断をするのではなく、被災者の人生をありのままに受け入れる。女性は「先生に会うと素直になれる。前向きで頑張るつもりでいるので、見捨てないでください」と話す。
阪神淡路大震災では、多くの人々が強い恐怖と不安で日常生活が送れなくなるPTSD=心的外傷後ストレス障害に陥り、自殺した人は少なくない。森川医師は「生きている理由を失うときが一番つらい。そうしたときに、第三者に話すことで『案外、自分も頑張っていた』と思い出す。そうしながら回復していく人がいる」と話す。避難所では、遺体が見つかるたびに重苦しい空気が流れる。緊張と不安で、多くの被災者の体がこわばっている。東洋医学の鍼灸師の資格も持つ森川医師は、体をほぐすことで、心もほぐれることを知っている。森川医師が精神科を目指したのは16年前。ボランティアをした阪神淡路大震災で、心に傷を負った多くの被災者を目の当たりにしたことからだった。その後、池袋でホームレスの人々に炊き出しをする組織を作り、活動を10年間続けてきた。森川医師は、新顔のホームレスの人には、お弁当と一緒に、困ったときのために連絡先を置いていく。