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 今回のテーマは「現代に蘇った結核の脅威」。
初期症状がカゼと似ているために、見逃してしまいがちな結核の恐ろしさと、その適切な対策法を考えていきたいと思います。
 厚生労働省の統計によると、カゼの症状で病院を訪れる患者の数は、日本全国で1日あたり34万人にのぼるといいます。そもそもカゼ、すなわち風邪症候群は鼻や口からウイルスや細菌が侵入して粘膜に付着することから始まり、さまざまな症状を引き起こします。そんなカゼと似た症状をもつ恐ろしい感染症がここ数年、都会を中心に猛威を振るい始めています。それが結核。肺に炎症を起こし、症状としては咳・たん・発熱を引き起こします。悪化すると肺に穴が開き、そこから出血して咳と共に血を吐くことも。そして最後には呼吸困難で死に至るのです。これは結核菌という菌を吸い込むことで感染し、それが体の免疫機能に打ち勝って肺に炎症を起こし始めることで起こり、基本的には空気感染。結核患者が吐き出した菌が新しい感染者を生んでいくのです。ただし、菌を吸い込んだ人全員が発病するというわけではありません。菌を体に持った感染者でも、実際発病して重症になってしまうのは10人に1人だと言われています。
 結核はかつて「不治の病」として世界中で猛威を振るい、日本でも1950年ごろまでは、毎年50万人近くの患者を出し、当時は「国民病」と呼ばれるほど、身近な脅威でした。ところが1948年に、特効薬ストレプトマイシンが開発され、それ以来患者数が激減。最近では「もはや過去の病」とさえ言われていました。それが最近になって、再び猛威をふるい始めたのです。特に、東京などの大都会で20代や30代の若者層の結核発病者が増えてきました。
 大きな原因の1つが高齢化社会。結核患者の6割が60歳以上の高齢者。もともと体内に菌を持っていた人たちが、高齢による免疫力の低下で、押さえ込まれていた菌が活動を始めて発病したケースが多いのです。
 2つめは若い世代の不摂生な生活。最近の若い世代のほとんどは、自然に結核菌に遭遇することがなく、体の中に免疫がありません。それに加え、働きすぎや1日2食の食事、外食中心の食生活など、栄養不足や生活の不規則性から若者たちの抵抗力が落ちていることも、感染者増加の大きな原因であるといわれています。
 3つめは、建物の近代化。機密性オフィスビルなど、近代化が進んだ建物は気密性が高く、空気の流れが滞りがち。そこに結核菌が紛れ込むと、空調などを利用してビル内に菌がばら撒かれることになります。
 しかしその一方で、近年、患者の数が減ったことにより、結核の治療を経験したことのない医師が多くなりました。風邪や肺炎と誤診するなど、的確な判断が下されないこともあるといいます。こうした早期発見の遅れが集団感染を引き起こす例も多いのです。
 そんな現状の中、私たちができる結核対策とは? 私たち自身が正しい知識を持って「ただのカゼだろう」と安易な思い込みをしないよう心がけることが大切なのです。咳が治まらず、2週間を越えても症状を引きずるようなら、結核を疑って病院、特に呼吸器系内科で検査を受けることをオススメします。
 そして必要とあれば、自分から結核の検査(X線検査・痰の検査)をお願いしてみてください。
 こうした検査の結果、もし結核が発病していることが分かったら…。どんな治療法があるのでしょうか。
 もし結核菌を吐き出すような状態にある場合には、当然入院の必要があります。治療としては、基本的には薬を飲むこと。非常に効果的な治療薬があるので、これを半年間服用することで治していきます。ただし、絶対にやってはいけないことがあります。それは途中で服用を止めてしまうこと。中途半端に薬を止めてしまうと、結核菌を押さえ込むどころか、薬に対する抵抗力をつけさせてしまうことになります。だから投薬治療をその後再開しても、薬の効かない強力な菌が生まれてしまうのです。こうなると、治療は極めて困難になります。
 また、予防法としては、何より健康を維持すること。仕事のストレスをためない、酒・タバコを控える、3度の食事を取る、過度のダイエットをしない、生活の場の換気をよくするなどを重点的に心がけましょう。
 番組中で「2週間以上、咳が続いたら、結核を疑ってみて下さい」ということをお話ししましたが、他にも結核の症状として“たん、発熱、胸痛、血たん”が挙げられます。ただ、咳も含めてこれらの症状が出ても必ず結核であるとは限らないので、必要以上にナーバスになることはないと思います。ですから、薬を飲んでも症状が治まらないような場合は、病院へ行ってみて下さい。結核は専用の薬でないと治らないものです。このような知識を踏まえた上で、皆さんが気を付けていくことが早期発見につながると思います。
(結核予防会複十字病院 中島由槻副院長・談)
 インフルエンザが流行り出しています。インフルエンザはただのカゼと違って、高熱を伴い、中には亡くなる人もいます。高熱がでると不安だし、少しでも早く熱を下げたいと、解熱剤を使う人は結構いるようです。しかし発熱は体が病気と戦うために必要なことです。でも、どうしても使いたい時には、非ステロイド系の抗炎症剤(ボルタレン、ポンタール等)を解熱剤として使うのは絶対やめましょう。医薬ビジランスセンター(大阪)や厚労省の研究でも、これらの解熱剤を使うと、インフルエンザ脳症などで死亡率が高くなる危険性が指摘されています。小児はもちろん、大人も同様です。万一、使う場合には安全だと言われている「アセトアミノフェン」を使いましょう。また、単なるカゼかインフルエンザかわからない時は、やみくもに解熱剤を使わないこと。病院で迅速に検査できますので、まずは医師の診断を受けることをお勧めします。
(写真家/医療ジャーナリスト 伊藤隼也氏・談)
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