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――小林さんが「ベストヒットUSA」を始めたころ、ちょうどマイケルの勢いもどんどん凄くなっていましたよね。
実はマイケルの「スリラー」のデモテープを、発売前のグラミー賞へ行った時に聴いてたんですよ。マイケル担当の女性が僕をホテルまで車で送ってくれたんだけど、その時に「これはすごいよ!」って、興奮してギンギンに聴かせてくれてね(笑)。アメリカでみんなが興奮してるのが伝わってきてたから、「すごいな」って思ってたんですけど、あの当時はあんなにデカくなるなんて思ってなくて…。僕はどちらかと言うとクールに見てた方ですね。

――その時に聴いた「スリラー」の印象はいかがでしたか?
これまでのマイケルの曲と違って、物凄い音になってるなって…。同じクインシーがプロデュースしてるんだけど、前作「オフ・ザ・ウォール」まではクインシーの音に乗ってる感じだったんだよね。もちろん、前の音楽は前のもので、ブラック音楽の最高峰で良かったんだけど、「スリラー」は歌っている世界や、音が作る絵みたいなものが全然新しいかった。黒人とか白人を超えたポップスで…。きっとマイケルの内面に成長があったんじゃないですか? アーティストには必ず人間としての成長があるんです。例えば、スティービー・ワンダーは'72〜'73年にめちゃくちゃ変わってるんですよ。ビートルズも前半と後半は全然違うでしょ。音速か何かわからないけど、それを破る瞬間が来るんですよ。それと同じものが、「スリラー」にはあったんですよね。

――小林さんにとって、マイケルの魅力とはどんなところにあるのでしょう?

当時はやっぱり新しかったよね。あと、彼は“音楽的”っていう括りじゃないんですよ。それに付随する考え方や感覚を変える影響力があったというのが、彼の偉いところだと思いますね。そうそう、今はグラミー賞をゴールデン枠で放送したりしないじゃないですか。でも当時はテレ朝で、それをやったんです。それはもうマイケルという存在のお陰なんですけどね。あと「ベストヒットUSA」で、日本で初めて「スリラー」のPVを流した時に10%台の視聴率を取ったんです。まだ深夜は数字を取れない時代に、驚くべき数字でしょ?

――確かに凄いですね。そういえば、小林さんが「スリラー」を紹介する時に「心臓の悪い方は見ないでください」というような前振りをしてませんでした?
そうそう(笑)。あれは初めて見たらビックリするよね。今だって内容をわかってても、久々に見ると驚く。この間フルで見たんですけど、やっぱり面白くて…。こんなに時間が経っても楽しめるのは魅力のひとつですね。あと、あの当時はビデオ・クリップがどういうものか掴めてない時代でね。そこへマイケルがハリウッドの監督を使って、映画と同じ作りのものを作ったんです。そこから、PVへの姿勢が変わった。そういう意味でも一時代を築いた人物ですよ。

――今後、アーティストとしてのマイケルに期待することは何ですか?
「スリラー」の時のように、また何か新しいものを見せてほしいですよね。それは外面のハッタリかもしれないし、もっと内面のものかもしれないけど。ただ今度もし無罪になって何かやるとすると、1000〜2000万枚売らなきゃ元が取れないような契約金になってくるじゃない? それって手かせ足かせになるんですよね。自分がやりたいものを求めると売れるとは限らないし、自然とみんなが好むようなものになってしまうからね。あと、兄のジャーメインがこの間CNNの「ラリーキング・ショー」に出て言ってたんですけど、今年ジャクソン5を再結成して、アルバムを出してから世界ツアーをやるっていう計画があるんですって。ただ、それも裁判次第でしょ。それに何よりも、彼はいま見せ物みたいになっちゃってるから。

――スキャンダルが前面に出てしまうと、真のアーティストとしての活動は難しいですね。
そうですね。ただ、僕はこれだけ凄いことをやったんだから、もう十分じゃないかなって気もするんですんですよ。それに僕はいつも思うんですけど、アーティストの真の姿は曲や表現の中にあるものでしょ。本当にその人の曲が好きなら、実はどんな人であろうと嫌いになることはない。いろんな情報が飛び交ってるけど、マイケルだってコンプレックスや、今までの生き方がなけりゃ、これまでの作品は生まれなかったはずなんです。だから僕は、皆さんもそういう風にマイケルを見てあげるといいんじゃないかなって思いますよ。

(小林克也さん・談)
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