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モロッコ編 撮影日記

撮影隊の体調とは裏腹に、モロッコは快晴
喉元過ぎればマスクを忘れる
私たちはポルトガルに別れを告げ、士気を高めモロッコへ向かった。しかしこの時、気持ち以上に高まってしまっていたものが…発熱していたのだ。咳をすると全身が引き裂かれそうな痛みが走る。スタッフ2人も同じ症状に悩まされていた。アジアンおやじ3人がマスク姿でウロウロ、街を練り歩いている。一体どこの怪しいパフォーマンス集団だ。苦痛と恥じらいの狭間で我々は悶えていた。
モロッコ南部、マラケシュに到着するや否や、宿泊しているホテルに現地の医師を手配してもらった。一体どんなお医者さんが来るのだろう?白衣にモジャモジャのヒゲ、そしてターバン?外国人リストを頭の中でパラパラ。待つ事30分、部屋のドアがノックされた。ドアを開けると、歳は50代半ばくらいか、白髪まじりでいかにも真面目そうなモロッコ人のおじさんが立っていた。見た目は…合格!しかしまだ、全てを捧げるわけにはいかない。私たちの症状について細かく伝えると、別段変わった風もなく、あっさり各人の診察を終えた。その後、念入りにカルテを記入し、処方箋を出してくれた。まさに事なきを得た、だ。シュクラン、先生!
だが…驚いたのはその処方箋の内容だった。3人に全く異なる種類の薬が処方されていたのだ。あれほど同じ症状だと伝えたというのに…仕方なく、期待もせずに各人が処方された薬を服用することに。すると…これが効果てきめん。3人ともがみるみるうちに回復したのだ。喉元過ぎればマスクを忘れる。あの医師が有能だったのだ。私たちの微妙に違う症状を見極め、理にかなった薬を処方してくれたという事だった。
後日、モロッコの医療事情を改めて調べ直してみると、大都市には日本や欧米と比べ遜色ない医療機関があり、医師の80%はフランスの大学を卒業した方々という記述を見つけた。今なら心を込めて言える、ありがとう先生!ちょっと疑ってごめんなさい。
我々のモロッコの旅が元気に始まった。
ディレクター 市川 智弘
診察中のスタッフ
カルテを記入する先生