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インドネシア編 撮影日記

展示中の蒸気機関車に乗ってはしゃぐ大学生たち
中部ジャワの鉄道博物館
インドネシアの鉄道の歴史は日本より古い。1867年、旧宗主国オランダの軍事目的で建設されたのが始まり。その発祥地にあるアンバラワ鉄道博物館へ撮影に行くと、かつて駅舎だった場所が博物館に姿を変えており、線路は1977年に廃線、今は洗濯物が干されたり、子供の遊び場という状態だった。
博物館には、インドネシアに現存する最古の蒸気機関車(1891年製造)をはじめ、歴代の機関車が数多く展示されていた。現在は定期的な運行はしていないものの、観光用の保存鉄道もある。何らかのイベントやチャーターで走らせることもあるので、リクエストが入れば知らせる、という回答を受け、蒸気機関車が噴煙を吐きながら走行する姿を撮影したいと期待したが、連絡は入らなかった。
鉄道の歴史を紹介する回があってもいいか、という気持ちで撮影に臨んだところ、なんとロケ当日、偶然近隣の大学生が課外授業に来ており、特別に1958年まで現役だったディーゼル機関車を動かすことになった。この列車が走るのは、実に3年ぶりだという。残念ながら蒸気機関車ではなかったが、まさに奇跡的なタイミングに巡り合えた。
この千載一遇のチャンスを逃すまいと、大学側に直談判し、我々も乗車できることになった。久しぶりに車庫から出たという列車を、整備士たちが2時間以上かけて調整。ようやく動いたかと思うと、スコールに見舞われたりと、果たして本当に動くのかどうかも疑わしい状態だったが、何とか夕暮れまでに間に合い、市内観光に出発。線路上に洗濯物があってもすぐ停車できるようにと、時速30キロ、自転車並みの速度でガタゴト動く様子を無事撮影できた。
ディレクター 二田 靖章
アンバラワ周辺の廃線となった線路
間もなく出発する特別運行の列車