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インド編 撮影日記

「ブルーシティ」ジョードプル
ラジャスタン州のカラフルな街を巡る
今回の旅、最後の路線はラジャスタン州を横断する旅。州都のジャイプルから歴史ある街をめぐり、670キロ西の砂漠のオアシス都市ジャイサルメールまで向かう。乾燥した土地に築かれた街は、古くから街を彩る様々な工夫がされていた。旧市街にピンク色の建物が立ち並ぶ「ピンクシティ」ことジャイプルはとても華やか。建物が青く染まる城下町ジョードプルは、「ブルーシティ」の愛称で親しまれ、涼しい色で日中の暑さを和らげてくれた。夕日で黄金に輝く街ジャイサルメールは「ゴールデンシティ」と呼ばれ、砂岩でできた民家は美しい手彫りの彫刻が施されていた。
彩り豊かなのは街だけではなかった。沿線ではよく見かけたは、野生のクジャク。クジャクはインドの国鳥。なかなか羽を広げてくれなかったが、極彩色の姿が乾いた大地に眩しく映えていた。
この地域の撮影で苦労したのが、朝晩の寒さだった。タール砂漠が広がるラジャスタン州西部は、最も暑い5月には、連日40度を超える暑さにもなるが、この季節は日中20度ほどと過ごしやすく、放射冷却により朝と夜はとても寒い。早朝、砂漠を駆け抜ける列車を撮影しようと、寒いなかで列車を待った。しかし、インドの列車に遅延はつきもの。駅に電話をして確認をとってみても、少し遅れているという曖昧な答えしか返ってこず、待てど暮らせど、列車は来ない。
何もすることがなく、日々の撮影スケジュールが書かれた「旅のしおり」を見返してみた。毎回車窓のロケ用に作っているという小冊子は、撮影項目、町の地図、路線図、時刻表がワンセットになっている優れもの。カラーペンで取材内容を書き込んだり、牛に踏まれたり、チャイをこぼしたりとボロボロになった「旅のしおり」はインドの味が出て、とても愛着のあるものとなっていた。
そんな旅の思い出に浸っていると、汽笛の音が聞こえた。すぐさま「旅のしおり」を投げ出し、写真撮影に備え、急いでパシャパシャとシャッターを切る。砂まみれになり「旅のしおり」がさらにボロボロになってしまった。
ディレクター 山本和宏
「ゴールデンシティ」ジャイサルメール
タール砂漠へ伸びる線路