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雨季のカンボジア〜青く輝く田園を走る 撮影日記

列車に乗り込む人たち
撮影初日の朝
プノンペン駅を出発する列車は、1日のあいだに、北線・南線それぞれ朝の1便のみ。列車が折り返してプノンペンへ戻るのは夜になるので、日中に町中を走っている列車の姿を撮るこのチャンスには自然と重みが出てきます。
撮影初日の土曜の朝は、そんな貴重な走り撮影から始まりました。ゆっくりロケハンする時間はありませんので、Googleマップで当たりをつけていたところへ行ってみて、カメラ位置を決めます。まずは昨晩決めた、北線と南線が分岐するポイントへ。本当に予定されている車体の列車が来るか?どれくらいの速度で来るのか?最初の撮影はドキドキです。
6:40に北線、7:00に南線がプノンペン駅を出発して、その10〜15分後くらいにここを通過するはず。私以外の4人が、撮影位置を探りに車で移動していた頃、私は線路の脇でカメラ番をしていました。線路を走る犬を眺めたりしてぼんやりしていると、なぜだか人が一人二人とやってきました。いったい何の用があるのだろう…?にこやかな青年が話しかけてきたので翻訳アプリで会話してみると、バッタンバンの家に帰るらしく、「今日人生初めて列車に乗るんだ」と言います。それなら駅はもっと向こうでは?ここでは乗れないんじゃない?と言ってもうまく通じません。もしかして、ここから乗るんだろうか。駅舎もホームもないというのに。ソティさんが戻ってきたので、集まっていた人々に話を聞いてもらうとやはりここが乗り場でした。背後にあったボロボロの建物を指して、かつて使われていた駅舎だと教えてくれました。
それにしても初めて乗車するという彼はよくここを目指して来れたなと感心。現地の人にしかわからないような小さな停車駅。おそらく日本のバスの感覚に近くて、そこに乗客がいれば停まるし、いなければ通過するという緩やかなシステムだそうです。
事前情報通り北海道から海を渡ったキハ列車がやってきました。なんともゆっくりと。乗客たちは列車によじ登り、北へ向かって行きました。駅の概念を覆され、やっぱり現地でしか分からないことがあるものだと痛感した朝でした。
ディレクター 中村 仁美
北線に乗る乗客たち
元駅舎