世界の車窓から

トップページ > 撮影日記

秋のオーストリア・チェコ 中欧の古都を巡る旅 撮影日記

ノヴィナ高架橋
思い出深いチェコのノヴィナ高架橋
この番組の醍醐味は、世界各国の列車と四季折々の美しい風景。そんな最高の一瞬を切り取るため、我々撮影隊は、あらかじめアタリをつけておいた場所へ、列車が来る1時間半ほど前には出向いて最良スポットを探した。草むらや山の上で、時には雨に降られ凍えそうになりながら、数十分もの間、列車が来るのを待つ。そんな中、なによりの安心材料となったのが、チェコの鉄道の優れた定時性だった。
チェコの国土の大きさは北海道ほど。しかし、張り巡らされた鉄道網は、北海道の約3〜4倍というのだから、その鉄道大国ぶりがよくわかる。国鉄や民間が提供する乗り換え検索アプリはどれも便利で、列車の遅延やおおまかな現在位置などをリアルタイムで教えてくれる。さらに、一等車や食堂車の位置などの車両編成や、機関車のイラストから運転方式(牽引か推進か)まで分かるなど、マニアックな情報も載っていて、チェコの人たちの鉄道愛を感じた。
撮影スポット探しでは、偶然の出会いにも恵まれた。北ボヘミア地方のリベレツ行きの路線で、地域のシンボルとなっている約100年前の石造りの鉄道橋、ノヴィナ高架橋を渡る列車を撮影した時のこと。山あいにある小さな集落で、橋のたもとから、良い撮影ポイントはないかと見渡すと、高台にある民家の庭が目に留まった。訪ねてみると、突然の訪問にもかかわらず、ご夫婦がにこやかに応じてくれた。庭へ入らせていただくと、なんと橋が一番良く見える位置に二人掛けのベンチが設置してあるではないか。夫婦と愛犬でここに腰かけ、夕暮れどきに列車を眺める時間が何よりの宝物なのだと教えてくれた。ふたりの話では、この辺りは四季の移り変わりが美しく、近年は移住者も増えているという。特に、芸術系の仕事をする人から人気なのだとか。この番組のロケの醍醐味、それは、異国の美しい風景を直に堪能できるだけでなく、こうした人たちとの思いがけない出会いに巡り会えることだと感じる一件だった。
ディレクター 野口 夏樹
橋を眺めるふたり
列車が来るのを待つクルー