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秋のオーストリア・チェコ 中欧の古都を巡る旅 撮影日記

映画の舞台となったメンヒスベルク
ザルツブルクでの出会い
ウィーン中央駅から高速列車レイルジェットエクスプレスで約2時間半、ザルツブルク中央駅に降り立った。中世からの城や教会が残り、ユネスコ世界遺産に登録されている街、ザルツブルク。モーツァルト生誕の地、そして映画「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台としても名高い。公開から60年の節目にあたり、今回はそのロケ地を映画と同じような撮り方で切り取ろうと準備してきた。
映画の舞台は旧市街を中心に点在しているが、このエリアは自家用車の乗り入れが制限されている。大量の機材もあるので、ドライバーができる限り近くまで車を回してくれるが、どうしてもスケジュールは押していく。ロケ地はどこも多くの観光客で賑わっていて、映画のワンシーンのようなカットも撮影できたが、時間が大幅に遅れみんなピリピリモードに。締めくくりは、ファンにとっての憧れの場所—主人公のマリアと大佐が愛を語り合った”ガゼボ”。旧市街からバスで15分のヘルブルン宮殿にあり、本来なら急ぐところだが、こんな状態では撮影を楽しめないと思い、一旦コーヒーブレイクを入れることにした。平林カメラマンが、ロケ中ことあるごとに掛けてくれた言葉「常に元気で明るく旅を楽しもう!」を思い出したのだ。そうすれば、自然と良い被写体にも巡り会える、という信念だ。
ガゼボに到着した頃には日も傾き、もう誰もいないだろうと諦めかけていたら、なんと目の前でプロポーズするカップルに遭遇!アメリカから来たという二人。彼は「彼女が大好きなこの映画の舞台でプロポーズしたかった」と達成感に満ちた顔で語ってくれた。コーヒーを飲まず急いでいたら、きっと出会わなかったであろう巡り合わせだ。車窓のロケは、旅をしながらその時々の出会いを映していく。運命を信じるわけではないが、良い出会いを引き寄せるには、まずロケ隊が楽しく旅をすることが大切だと強く感じた一件だった。
人気観光地のザルツブルクでは、2025年5月から新しい取り組みを行っている。宿泊客には、0.5ユーロの移動税が課される代わりに「ゲストモビリティチケット」が発行され、州内の鉄道やバスといった公共交通機関が乗り放題となるのだ。駅と旧市街、映画の舞台を徒歩で巡るにはかなりの健脚が求められるので、ぜひこの制度の活用をおすすめしたい。
ディレクター 野口 夏樹
こちらも映画の舞台 モーツァルトシュテーク橋
ロケ地の前でプロポーズ