

2009年10月30日
新型インフルエンザの流行が進む中、岐阜や和歌山、山口県で妊婦や基礎疾患のある人への新型インフルエンザのワクチン接種が10月30日から始まった。ワクチン接種の回数をめぐり、一部の専門家と国の意見が分かれ、ワクチンの接種の現場は混乱している。当初、全員2回としていた接種が、公開の場で行われた専門家による意見交換会(10月16日)では、“13歳以上は1回で良い”と提案された。その後の会議でまた原則2回接種に変わった。厚生労働省の足立政務官は、「私達は2回接種を原則に進めてきて広報してきた。それが意見交換会の内容とはいえ、あたかも1回接種で十分であると判断したかのような報道がなされたことが混乱を生んだことは確か」と語った。
では、なぜ、専門家は2回接種を1回接種でも良いと提案したのか。
専門家による意見交換会(16日)では、20歳から50歳の健康な200人にワクチンを1回接種した時の効果や安全性について検証し、1回打ちを提案した。この会の座長を務めた自治医科大学教授・政府新型インフル諮問委員会の尾身茂委員長は、「様々ある基礎疾患、妊婦などすべてに臨床試験を前もってやることはいいが、時間的制約があって難しい。従って、今回のデータを十分分析し、さらに、今まで蓄積されたインフルエンザに関する治験、また外国の考え方や最新の免疫学の常識を総合的に判断して政府に提案した」と説明する。治験結果は専門家たちの予想を超えるもので、1回の接種で、ほとんどの人に国際的な基準を満たす抗体が得られたという。その理由を季節性インフルエンザの一種“Aソ連型”が関連していると判断した。Aソ連型と新型は異なるウイルスだが、共通している部分も見つかっているからだ。「免疫物質を作る遺伝子だけでは70%共通。直近の3年間、日本人のほとんどが、ソ連型インフルエンザに感染して、免疫細胞が感染したことを覚えている。今回の臨床試験は、そのワクチンが接種されたために過去の感染の記憶が蘇ったために免疫物質の上昇が良かったと、多くの科学者が考えている」と尾身氏は言う。
これに対し、足立政務官は、「16日の意見交換会の意見が科学的に言えるものか、私自身はそこまで言えないのではないか」としたうえで、足立政務官の呼びかけで、急きょ専門家による意見交換会(10月20日)が開かれた。