

2010年3月22日
去年12月、アメリカのオバマ大統領が決めたアフガニスタンへの追加増派。現地から戦死者のニュースが毎日のように伝えられるなか、若い兵士たちが次々に戦場に送られていく。戦場に送られる可能性があるにも関わらず、今、兵士になりたい若者たちが増えている。なぜ、軍への入隊希望者が増えているのか。そこには、今のアメリカの現実がある。
アメリカ西海岸・サンディエゴ。沖縄にも駐留する海兵隊の兵士としての人生はここから始まる。海兵隊の任務は、ひとたび戦争が起きたときに、真っ先に敵地に乗り込み、戦闘を行うこと。常に危険な最前線で戦う彼らは、アメリカ軍の中でも精鋭の戦闘集団だ。新兵たちは、3カ月にわたる基礎訓練、いわゆる“ブートキャンプ”で鍛え上げられていく。上官の命令には、絶対に服従。軍隊の基本が初めから叩き込まれる。教官は、新兵たちに罵声を浴びせ続けることで、新兵たちのプライドを剥ぎ取り、普通の若者を兵士に作り変える準備をする。ほとんどが高校を卒業したばかりの若者で、平均年齢19歳。新兵たちは訓練中、「Kill」=「殺せ」と叫び続けるよう教育される。この言葉を繰り返すことで、軍隊の本質が刷り込まれていくのだ。彼らは、ブートキャンプを卒業したのち、やがてアメリカ国内の基地や海外の最大拠点である沖縄に派遣される。そして、早ければ半年後にはアフガニスタンへ送られる。今、こうした軍の世界に入る人が増えている背景には、不況がある。
アメリカ軍の中でも、最も定員が多い陸軍は、慢性的な人出不足に悩んでいた。ところが、ここでも志願者が増えている。イラク戦争が激化した頃は、志願者が少なく、軍は入隊者へのボーナスを増やすなど、様々な手を使って募集を図った。しかし、不況が風向きを大きく変えた。今では、志願者の半数以上を断っている状況だという。
レストランで働くウィリアム・ダベンポートさん(28)も、経済的な理由で陸軍への入隊を決めた。ウィリアムさんは、2年前に結婚。妻と2人の息子を養っている。以前はレストランの仕事でも十分に暮らせたというが、「子供が出来て、高額の医療費に不安を覚えた」と話す。妻のデボラさん(21)も、2人の子供を抱える今、軍に入るのが最善の道だと考えている。入隊5年目の若い兵士の給与は、平均で年250万円ほどと、決して多くはないが、家族も含め、医療費はほぼ無料。