

2010年5月14日
心臓から全身に血流を送り出す大元となる動脈、大動脈。大動脈は、直径約30mmあり、体の中で最も太い血管だ。近年、高齢化や、生活習慣病によって若年層にも増えている動脈硬化により、大動脈がこぶ状に膨らむ病気“大動脈瘤”の患者数が増えている。厚生労働省の概算では、年間1万6000人から2万1000人が、この病気にかかっているとみられている。この大動脈瘤が破裂すれば、体内の血液が急速に奪われ、失血死する危険性が高い。こぶが破裂するまでは、ほとんど自覚症状はない。破裂すると死に直結する危険性がある大動脈瘤。発見するにはどうしたらいいのか。
大動脈瘤の患者の増加に対応するために、10年前に大動脈瘤の治療を専門に行うセンターを設立した神奈川県川崎幸病院。山本晋医師は「何らかの理由で病院を受診しない限り(大動脈瘤は)見つからない。通常の健康診断といわれている胸部レントゲンで見つかる可能性はあまりない」と話す。大動脈瘤を事前に発見するには、定期的にCT(コンピューター断層撮影)検査を受ける以外に方法はないという。
定期的に人間ドックを受けていた男性(71)は、CT検査で腹部に大動脈瘤が見つかった。こぶの大きさは、直径55mm。健康な大動脈の倍近い太さにまで拡大していた。放置しておけば、一年間に15%以上の確率で破裂する恐れがある。「十数%というと結構な破裂率。破裂イコール死亡につながる可能性が高い」と山本医師はいう。男性にとって、病気は思いがけないものだった。35歳でタバコをやめ、お酒も控え、食事にも気を使い、人一倍健康を意識してきた。病名を告知された男性の生活は一変。いつ破裂するかわからない爆弾を抱えた恐怖が頭から離れない。また男性の妻も「病気が見つかってから、心配で常に一緒に歩くようにしている」という。いつ破裂するかわからない爆弾の恐怖から、男性は、定年後の趣味だった山歩きもやめた。「破裂した場合、救急車も呼べないかもしれない。そうなった場合は最後かなと思わざるを得ない」と話す。男性は、手術を受ける決断をした。
大動脈瘤の治療には、二つの方法がある。一つは、ステント治療(健康保険適用)。この方法は、大動脈瘤が破裂しないように、血管を内部から補強するものだ。足の付け根から管を通し、モニターを見ながら治療する。新しい治療のため、長期の治療経過には不確かな点もある。