

2012年5月4日
東京都新宿区にある都営住宅百人町アパート、通称『戸山団地』。当初は20代の家族が多く入居していたこの団地だが、完成から半世紀以上がたち、今では65歳以上の高齢者が過半数を占めている。この3年だけで、団地内で40人以上が孤独死した。その対策として、団地内の見回り隊が1人暮らしの高齢者宅を巡回していた。しかし、それを変えざるを得ない事態が発生した。今年に入り、いわゆる“孤立死”が相次いでいる。見守りの対象外だった2人以上の世帯での共倒れが、この団地に大きな影を落としている。
認知症の母親(90)と耳の聞こえない妹(59)と暮らす中村和世さん(68)は、今も働きながら2人を介護している。緊急連絡先などを目につくところに貼ってあるが、妹は、かけられないという。中村さんは、自分が倒れたら、3人が共倒れになってしまうと、孤立死の不安が常につきまとうという。中村美枝子さん(76)は、6歳上の姉を介護する老老介護世帯だ。姉は、鼻以外にも胃がんを患い、心臓にはペースメーカーも入っている。美枝子さんは、自分も世話を受けてもよい年齢だが、1人で介護に奮闘している。「姉はヘルパーを嫌がるから、私が元気なうちは看る。疲れるけど仕方がない。姉妹だから」と話す。もし、介護者が倒れると、一方の要介護者に待っている最悪のケースは、餓死や衰弱死だ。誰かが異変に気づけば命が助かるが、戸山団地には75歳以上の単身高齢者だけでも約500世帯。見守るボランティアもまた高齢者だ。団地内で孤立死対策をしてきたNPO法人『人と人をつなぐ会』の本庄有由さん(73)は「1人暮らしの家を見回るのが大変で、2人世帯まで手が回らない。90歳以上の人が何人もいるから、そこだけで、いっぱい」と話す。
“孤立死”という新たな問題に直面している戸山団地。その対策を進めるうえで大きなネックとなっているのが、“個人情報”が絡んだ2つの問題だ。1つは、団地内の情報が集まらず、最新の住民名簿が作れないということ。本庄さんは、「“近助”近くの人が助けるのが一番強い」と話すが、隣近所の名前すら知らない状態では、地域のつながりなど生まれないと訴える。もう1つは、電気やガスなどの問題だ。札幌市や埼玉県の孤立死では、ライフラインの停止情報が役所に上がっていれば、対策が取れた可能性があった。
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