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イタリア・フランス編 撮影日記

修復中のトレヴィの泉
よく知られた街の、紹介の仕方について
日本での取材準備中、僕はローマの街を紹介する回の内容について考えあぐねていた。ローマは見所満載すぎて、わずか2分の番組で何を紹介したものか決められない。さてどうしたものか、、、。結局、現地コーディネーターに新鮮な切り口を探してくれるようにお願いしたのだが、数日して届いた特別レポートを読んで僕は小躍りした。
曰く、「ローマにある観光名所はどこもかしこも修復中です」とある。特に、ローマのシンボルともいえる【コロッセオ】、「ローマの休日」の【スペイン階段】、後ろ向きにコインを投げ入れる【トレヴィの泉】の3大名所(ローマっ子はビッグ3と呼ぶらしい)が揃って大規模改修中のため工事現場と化しているという。ならば、いつものローマじゃない姿を逆に面白がってしまおうと方針は決まった。
実際に現場に立ってみると、トレヴィの泉などは本題の泉の水が抜かれていて、何の名所だか分からなくなっていたけれど、水の無い水槽の上に仮設の回廊が設置されて、そこを歩くと有名な彫刻群を間近に見られるようになっている。この機会に特別な視点からトレヴィの泉を楽しんでもらおうという施主のセンスが感じられる。ちなみにこうした歴史遺物の修復にかかる巨額な費用を出しているのはブルガリ、フェンディ、トッズといった名だたるファッションブランドだそうだ。宣伝効果を狙う戦略的出資には違いないだろうけれど、価値あるものにお金を出すパトロンがちゃんと存在しているイタリア社会の“粋”を感じたのでした。
同じように“見せ方”で悩んだのがピサ。「ピサの斜塔」で有名だけど、他に情報が無い。この街もコーディネーターに特別リポートをお願いしたのだが、「地盤が弱くて建物はみんな傾きます。だからピサには斜塔がいっぱいあります」という報告をもらって僕は狂喜乱舞。街の片隅にある地味な教会の鐘楼が今にも倒れそうなほど傾いているのを撮影できたのも痛快な体験だった。
ディレクター 伊藤 正憲
ピサの斜塔
ローマからピサへ向かうフレッチャビアンカ