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フィンランド編 撮影日記

フィンランドを北から南へ縦断しヘルシンキへ向かう列車
夜行列車の旅
首都ヘルシンキから北極圏の入口、ロヴァニエミへの旅は折り返し地点。夜行列車『サンタクロース・エクスプレス』に乗って、再びヘルシンキを目指す。およそ12時間の長旅だ。ロヴァニエミ駅では大勢の人が待合室ではなく、わざわざ雨が降るホームで列車の到着を待っていた。夜行列車に乗る楽しみで、胸の高鳴りを抑えきれないのだろうか。乗客からは一体感のようなものさえ感じる。
列車は定刻通り、夜9時15分に出発。しかし、車内では予想外の事態が起きていた。夜行列車には個室があるのだが、われわれ撮影スタッフ4名全員の部屋が施錠されていて中に入れないのだ。これには焦った。早く機材を部屋に入れ、乗客が眠ってしまう前に撮影に向かいたいのだが、それができない。ひとまず廊下に機材を置いて撮影に向かおうか、とも思ったが、いくらフィンランドは治安がいいとはいえ、万が一盗難にあえばこれから先の撮影に支障が出る。そこで、部屋を開けてもらうため、まずは車掌さんを探すことに…。
別の車両でも我々と同じく部屋に入れず、廊下で佇んでいる人をちらほら見かけるが、みんな特に慌てる様子でもなく泰然としている。その中の一人が、部屋に入れない理由を教えてくれた。この日の日中にフィンランド国鉄を含む公共交通機関でストが起きたため、その影響で職員が足りていないのではないか、ということだった。ああ、そういうことか。この話を聞いて、ロヴァニエミ駅のホームでの一体感に合点がいった。夜行列車への期待が半分と「本当に列車は来るのだろうか」という不安が一体感を生んでいたのだ。ようやく車掌さんを見つけて部屋を開錠してもらったが、出発からすでに30分近く経っていた。早く撮影に向かわなければと内心焦っていたが、部屋に備え付けられたベッドの布団の柄があまりにも可愛らしいフクロウの絵だったので、どんなにいかついフィンランドの大男もこのメルヘンな布団で眠るのかと思うとほっこりしてきた。
ディレクター 浜田悠希
フクロウ柄のかわいい枕
犬も一緒に夜行列車の旅ができる