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 人生において、最も感動的なイベントのひとつ「出産」。しかし、その影には数限りない危険が潜んでいます。
今回のSmaクリニックでは、「産婦人科vol.3」と題し、妊娠中を襲う、恐ろしい病気の実例や、最新の出産医療事情を徹底リポートします。
 妊娠から出産に至るまでには、様々なトラブルが起こる可能性があります。主に妊娠初期(5〜8週ごろ)に起こりやすい病気が「子宮外妊娠」。実際、妊婦さんの100人に1人の確率で起こっていて、大変な事態を招いてしまうこともあるんです。
 通常の妊娠では受精卵は子宮内膜に着床し、赤ちゃんは子宮の中で大きくなっていきます。が、何らかの原因により子宮以外の場所に着床・妊娠してしまうことがあるのです。これが「子宮外妊娠」。例えば、受精卵が卵管といわれる子宮へのパイプに着床してしまうと、一定の時期が経過すると卵管が破裂し激しい出血を起こします。早急に処置をしないと、母体の生命をも脅かすという危険が!
 現在の医療では超音波検査の進歩により、妊娠6〜7週の段階で正常に子宮で妊娠しているかどうか確認でき、子宮外妊娠の早期発見は可能です。卵管が破裂して大出血する前に発見できれば、内視鏡を使った手術などで卵管を切除しないですむ方法も選択できます。しかし現在の医療では、子宮外妊娠してしまった胎児を無事に出産することは不可能だといいます。
 一方、妊娠中期から後期(7〜9カ月)に起こりやすい恐ろしい病気が、妊娠中毒症による「常位胎盤早期剥離」。これは、まだ赤ちゃんが子宮内にいるにもかかわらず、胎盤が剥がれてしまう状態で、こうなると赤ちゃんは酸素がもらえなくなり、放置すると子宮内で死亡してしまうのです。だから、帝王切開によって、速やかに胎児を取り出す必要があります。このように、妊娠中には数々の恐ろしい病気が考えられます。が、あまりナーバスになりすぎて精神的に不安定になるのは一番良くありません。
 中には、妊娠中の自己管理で、昔の常識が今の非常識になってたりすることもあります。例えば、昔は妊娠してるんだからお腹の子供の分までしっかり食べなさいと言ってましたが、これは大間違い!栄養過多になって太りすぎると、妊娠中毒症や糖尿病など様々な弊害が考えられるからです。
 産婦人科の分野でも日々、医療は発展しています。その一例が、今までほとんど助からなかった「胎児胸水症」という、お腹の中の赤ちゃんがかかってしまう胎児特有の肺の病気。この病気は、ある治療で70%以上の胎児を救うことが出来るようになったんです。その最先端の治療法とは「胎児手術」。母体内にいる胎児に手術することです。超音波による検査で、母体内にいる胎児の疾患などが詳しく判るようになりましたが、近年までは異常を告知された胎児の親が取りうる方法は、妊娠継続を諦める(中絶)か、リスクを承知で妊娠を続け出生後の治療に賭けるかのどちらかでした。当然、時期を逸した出生後の治療では、救命できなかったり、重度の障害が残る可能性が非常に高いのです。国内で年間約120万人生まれる新生児のうち、1%弱がそういった先天的な疾患を持っているといいます。
 そんな中、この「胎児治療」は希望の光ですが、これには制度的な問題が残されています。厚生労働省によると、出生前の「胎児」は完全に「患者」と位置付けられていません。胎児の各種検査に関しては医療保険が適用されますが、安全性などが確認されていない面もあるという「胎児手術」には医療保険が適用されず、莫大な費用を要する――つまり金銭上の問題で「中絶」を余儀なくされる夫婦も中にはいるというのです。ひとつの小さな命を救うためには「胎児治療」に関しての技術の進歩と共に、制度的な改革も急務であると言えるでしょう。
 “良いお産”とは一体何なのでしょうか?人によって、いろんな価値観があると思います。しかし、新しい命と母親の安全を第一に考え、その上で、どんなところ(環境)で産むのかを、両親で決めるのが“良いお産”を実現する第一歩だと僕は思います。“自然なお産がしたい”いう考え方が最近広まっていますが、医療的介助ゼロ! で家や助産婦さんのもとで産むのが、自然な良いお産だと勘違いしている人も時々います。確かに、人類の永い歴史を考えれば、出産に医師や病院が関わるようになったのは、つい最近のことです。でも、その間の、さまざまな努力が赤ちゃんや母親の死亡率を著しく減少させました。つまり、尊い命がより守られるようになったのです。しかし、その一方で、過剰な医療的介助が、生命誕生をより身近に感じる…自然なお産をスポイルしているという声があるのも事実です。そんな中で、最近ユニセフが母乳育児を重視し「母乳育児成功のための10 カ条」にもとづき、赤ちゃんの人生を可能な限り最善の形でスタートできるよう、母乳育児を実践する“赤ちゃんにやさしい病院”の認定を始めました。日本でも認定を受けた病院が20施設(2002年2月現在)あります。お産が多様化する世の中ですが、ぜひ自分の目で見て理想のバース・プランを実行できるか調べてみて下さい。
(写真家/医療ジャーナリスト 伊藤隼也氏・談)
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