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――今回はミュージカルに関する特集でしたが、いかがでしたか?
VTRが凄く丁寧に作ってあったので、ビックリしました! 細かく言うと2カ所間違えてたかな(笑)。それを抜いたとしても、凄く感動しました。ブロードウェイは国際的な今やビジネスになってるから、自分たちの権利を守るために、それ関係が非常にうるさくなってるんですよ。なのに、今日はあれだけのものが作られていて…。本当にありがとうございます。スタッフの皆様、御苦労さまでした!
――2回のスマステ出演を通して、演出家としての目から見た香取編集長の印象はいかがですか?
彼は凄い存在感があって魅力的ですね。彼の出してるオーラみたいなものが、とても実直で心地の良いものを持っている。それこそ今日流れたツアーでの映像を見てても、ストレートな笑顔を観客に投げることのできる人じゃないですか。だから、彼は舞台でも見事に存在感を発揮する人なんだろうな、という気がしますね。彼がやる気があるかどうかわかりませんが、ミュージカルもいけると思いますよ。凄い期待してます。
――そもそも、宮本さんはどういうきっかけでミュージカルに魅かれたのですか?
うちの母がSKD(松竹歌劇団)に所属していたんですね。それと、僕の生まれ育った家が喫茶店を経営しているんですが、それが新橋演舞場の前にあるんです。あと幼い頃から、ハリウッドのミュージカル映画ばかり見てたこともあって、物心がつく頃には舞台や映画を通してミュージカルというものが生活の一部になっていたんですよ。で、母からずっと「いつかお前はブロードウェイに行くべきだ。本物はそこにあるんだよ」と言われ続けてて、“ブロードウェイってどんな所なんだろう”って憧れてたんです。実際にニューヨークを訪ねたのは、母が死んだ後の21歳の時。それから、ずっとニューヨークに行ってはダンスレッスンに出掛けたり、舞台を見たり、友人を作ったりして…。やっと今年、ブロードウェイに進出できるという展開になったんです。
――今秋からの「太平洋序曲」の上演ですね。演出家としては東洋人初の進出ですから、凄いですよね。
もともとミュージカルというものはジャンルを超えるもの――舞台、芝居、踊りを超えてニューヨークで生まれたものなんですね。ということは、国や民族を超えて、みんなが楽しめるものがミュージカルだと思うんです。そういう意味では、いろんな国の人を迎え入れる力を持っているはずなんですが、これまでは残念ながら数多くいるクリエイターたちのほとんどがアメリカ人という現状だったんです。それが、ようやく僕のような日本人の演出家を雇うことになって…。いまブロードウェイも変化して来てるんだな、と思いますね。今度やる「太平洋序曲」にしても、VTRで紹介のあった「フラワードラムソング」にしても、これまでは白人が思い描いてるステレオタイプの中国や日本が演出されてたりするんです。そうすると、その作品をやっている東洋人にしてみれば時々つらいこともあるんですね。そういう意味では、今回は日本人である僕が演出できることは嬉しいです。ブロードウェイにとっても新しい歴史になるし、これは面白いなと思いますね。
――ブロードウェイでの上演と、他の場所での上演との間にはどんな違いがありますか?
やっぱり、競争の凄さと層の厚さが違いますね。あれだけ劇場が密集していて、そこへ目の肥えた世界中の人々が見に集まるわけですよ。小さな劇場街ですけど、作り手はお互いに「ブロードウェイは物作りの中心で、自分たちこそ最高のものをやっている」という誇りを持ってやっている。それがたまにノスタルジックになってしまって、古臭くなってしまうこともあるんですが、一方でいろんな形のものがどんどん作られている。そこが素晴らしいと思います。ミュージカル=ジャンルを超えるものですからね。
――まさに宮本さんの手掛けてらっしゃる作品がそれですね。次々と幅広いジャンルのものに挑戦されてるじゃないですか。
範囲を超えちゃうことが好きなんで(笑)。自分自身が好きなものを挙げれば、オペラに舞台、音楽、美術…と様々なんです。だから、逆にコレって決めたくないんですね。自分のジャンルも人のジャンルも、仕事の範囲もすべてぶち壊すことが、僕の夢。実を言うと、ブロードウェイでやることが本来の目的じゃないんです。そんなことはこの数年のことだと思ってるんで…。ただ「太平洋序曲」はアメリカがどうやって日本に侵略したかというところから、物語が始まるんです。つまり、いまのアメリカ人にとっては一番考えるべき“外国の人々がアメリカ人をどう思っているか”という部分が入っているんです。それを戦争とは反対のエンターテインメントを通して、アメリカという国の中でアメリカ人と一緒に考えながらクリエイトすることができる。だからこそ“やりたい”と思ったんです。そういう類の活動をしていくのが僕の夢であり、やりたいことだから。これからもニューヨークだけじゃなく…来年か再来年にはロンドンでも作品を上演すると思うんですが、世界を転々と回って行きたいですね。もちろん演出だけじゃなく、いろんなことをやって…。あらゆる壁を、僕は軽々と超えて行きたいんです。軽々とはなかなか行かないんですけどね(笑)。 |
(宮本亜門さん・談) |
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