2006 FIFAワールドカップ ドイツ|F組特集 第2戦vsクロアチア クロアチア博士・長束恭行コラム 第3回

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第1戦vsオーストラリア クロアチア博士・長束恭行コラム
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◇第3回◇ W杯欧州予選の戦いぶり
 10戦7勝3分、得点21失点5。この数字は予選グループを1位で突破したクロアチアのものだ。2004年7月に監督に就任したクラニチャル監督はベテランと若手を融合し、彼らを適材適所に配置したバランス良いチームを作った。クロアチアの予選の戦いぶりを振り返ってみよう。
 
 初戦は2004年9月4日、闘将マテウスが率いるハンガリーをザグレブに迎えた。かつては「マジック・マジャール」と恐れられた古豪だ。しかし11分にMFフシュティが肘鉄でレッドカードを受け、退場。クロアチアが俄然、優勢となる。FWプルソが軽いステップから強烈な先制弾を決めると、後半も2点を追加して3-0の勝利。幸先の良いスタートを切った。
 
 その4日後、クロアチアはイエテボリでスウェーデンに挑んだ。ラーション、イブラヒモビッチ、リュングベリらの怒涛の攻撃をゴール前で跳ね返す。ゴール前に陣取るのはトゥドール、シムニッチ、R.コバチといった国際経験豊かなDF陣。64分、クロアチアは正面27mの位置で直接FKを得ると、スルナの右足から放たれたボールは急激に変化し、ゴール左に吸い込まれた。アウェーで勝利をもぎとったクロアチアはグループ首位に立つ。
 
 10月9日、ストイチコフに率いられたブルガリアがザグレブへやってきた。ブルガリアは速いボール展開とコンビネーションに優れた攻撃的チーム。同グループだった前回の欧州選手権予選では後塵を拝している。前半はスルナのミドルシュートとPKで2-0とリードするも、残り15分でブルガリアは息を吹き返す。M.ペトロフが78分にシュートを叩きこむと、86分にベルバトフが同点弾となるダイビングヘッド。R.コバチの負傷交替が響いた。
 
 年が明けた2005年3月、クロアチアはアイスランドとマルタをザグレブに迎える。2ヶ月前にディナモ・ザグレブからライバルのハイドゥク・スプリトに移籍したニコ・クラニチャルに向けて、ザグレブのサポーターによる強烈なブーイングが続けられ、ライターや発炎筒も投げつけた。しかしニコは動じることなくチャンスを作り出し、4-0、3-0と危なげない勝利を果たした。
 
 続くソフィア決戦。3年前、クロアチアはこの地でブルガリアに好きなようにやられた。今回は開始直後の猛攻を凌ぐと、18分にニコからスルーパスをもらったバビッチが先制ゴール。56分、この試合からMF起用のトゥドールがオーバーラップしてリターンをもらうと、狙いすましたシュートで2-0とリードする。M.ペトロフのFKで追い上げられるが、80分、ニコがボールを持つと一瞬のフェイントでストヤノフ(現ジェフ千葉)をかわしてドリブルシュートを決めた。6月4日はブルガリアに引導を渡した日となった。
 
 グループ1位を賭けたスウェーデンとのマッチレースが続く。9月はアウェー2連戦。アイスランド戦はバラバンの2ゴールで逆転勝利。しかし直後の弱小マルタ相手に1-1のドロー劇を演じる。弱い相手に気を抜くクロアチアの悪い癖が顕著に出てしまった。そして10月7日、ザグレブに2位スウェーデンを迎えた。
 
 W杯出場には勝利が必須条件。マルタ戦の教訓を胸に、クロアチアは試合開始からアグレッシブにペースを握っていく。55分。ニコのクロスにDFメルベリが思わずハンド。PKのキッカーはスルナだ。スタジアムで唯一、PKシーンに背を向けたのはクラニチャル監督だった。ボールがゴール右隅に吸い込まれた瞬間、歓喜に湧くスタンドの反応からゴールを悟った監督は、涙目でイヴコヴィッチGKコーチと抱き合った。この夜、クラニチャル率いるクロアチアは3度目となるW杯出場を決めたのだった。

クロアチア博士 長束 恭行 プロフィール
クロアチアの首都ザグレブ在住。1973年、名古屋生まれ。
同志社大学経済学部卒業、ザグレブ大学クロアチア語コース修了。
大学生時代にはクイズ王番組に多数出演。
現在は、クロアチア語通訳・コーディネート、クロアチアの観光スルーガイドをするかたわら、生き甲斐であるクロアチア・サッカーを追っかけている。国内リーグ、代表試合を含めて年間40戦ほど取材。お気に入りのクラブはディナモ・ザグレブ。
現在、「やべっちF.C.」では”クロアチア博士”として出演中。
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