月曜日の朝に
2022年11月29日

 眠りながらも、頭はサッカー・ワールドカップに支配されていた。

 前夜、つまり日曜日の夜、寝酒を飲みながら僕の頭の中は目まぐるしく回っていた。
 というのも、日本代表がコスタリカに敗れ、一瞬にして気持ちを切り替えた僕は、さっそくいろいろなシミュレーションを始めたのである。日付をまたぎ、自分がいびきをかいている頃には、グループEのもう1試合、スペイン対ドイツの試合が行われる。

 まず、ドイツが敗北するケースを考えてみた。ドイツは0勝2敗となり、決勝トーナメントに進出する2枠に入るのはかなりハードルが高くなる。
 いや待てよ、日本には不覚を取ったものの、強豪国ドイツだけに、スペインに勝つ可能性は大いにある。そうなると4チームが1勝1敗で並ぶことになる。こりゃ大混戦だ。

 寝酒を飲みながらそんなことを考えていたら、すっかりサッカーに頭を支配された状態で眠りに落ちた。自分が日本代表の一員として決戦のピッチに立っている夢を見た。スパイクの紐が結べずに、観客のブーイングを浴びていた。なんという夢だ。
 すっかり疲れ切って目覚めた朝、ベッドでスマホを開いた。するとスペインとドイツは引き分けていた。これは想定外だった。寝酒のつもりで深酒をしてしまった僕は、この「引き分け」という事態を全く想定しないまま眠りについてしまったのだ。失態だ。誰にも影響しないけど。

 ネットの記事を拾い読みした。選手批判とか、監督の采配批判が激しいのはサッカーならではだ。日本をこきおろした海外の記事が紹介されることも多い。まったく、サッカー選手という存在は、メンタルがよほど強くなければやっていけない。
 その中で、本田圭佑さんがABEMAでの解説の中で述べた言葉が紹介されていた。
 「別にこの状況は勝手に僕らが期待して勝手にガッカリしてるだけ。もうわかってたよ、もともとこうだったよね、というラインにもう1回落ち着かせて」。

 その通りだと思った。本田さんには金曜日の報道ステーションにドーハからゲスト出演してもらった。鋭い切り口と独特のユーモア、選手目線に立った熱さ、ほのかな優しさに、僕はひたすら感じ入っていた。報ステのレギュラーである内田篤人さんとのコンビネーションも抜群だった。
 そうなのだ。2戦を終えて1勝1敗の五分。得失点差はゼロ。上出来ではないか。もともと厳しいグループであることは分かっていたはず。原点に戻った、いや原点以上のところにはもう来ている。

 そこで改めて頭の中でシミュレーションをしてみよう。
 現在、スペインが1勝1分けで勝ち点4の1位。日本とコスタリカが1勝1敗の勝ち点3で並ぶが、得失点差で日本が2位、コスタリカが3位。そして0勝1敗1分けのドイツが4位となる。この状況で、日本は次のスペイン戦でどのような結果を残せば決勝トーナメント進出の2枠に入れるか。

 まず、スペインに勝てば勝ち点6となり、文句なしの決勝トーナメント進出である。

 一方、スペインに負けて1勝2敗となったら絶望である。同日に行われるドイツ対コスタリカの試合の結果、どちらかが勝てばその時点で勝ち点4以上となって日本を上回るからだ。

 次に日本がスペインと引き分けたらどうなるか。日本は勝ち点4を確保することになるが、ドイツ対コスタリカの結果次第となる。これが引き分けなら日本は決勝トーナメント進出だ。コスタリカと勝ち点では並ぶが、コスタリカはスペインに大敗したのが響き、得失点差で日本が上回るからだ。
 ドイツが勝利した場合はどうか。勝ち点では日本と並ぶが、コスタリカに2点以上の差をつけての勝利なら、今度は得失点差でドイツが2位となる。1点差でのドイツの勝利なら・・・これはちとややこしいので、サッカー専門誌に譲ります。

 とにかく、なんだか難しいぞ。日本の勝利を信じて応援しつつも、引き分けることも想定しつつ、コスタリカがドイツに勝たない程度にほどほどに応援するという、ややこしい対応が迫られる。

 なんだか、月曜日の朝からひどく頭を使ってしまった。早くも疲労困憊である。
 でも、なんだか幸せだな。サッカーっていいな。
 と言いつつ、もう昼になってしまった。すると、テレビでは、僕がいつまでもスポーツファンでいることを許さないように、いろいろなニュースが入っている。中国ではゼロコロナへの不満が噴出している。東京五輪・パラリンピックをめぐる談合事件では、電通に加えて広告大手の博報堂などにも家宅捜索が入った。国会では復興大臣が野党の追及に四苦八苦である。

 容赦なくニュースは起きる。嬉しいニュースも、ドキドキするニュースも、そして深刻なニュースは特に。乱雑なごった煮のようにしてやってくる。
 もう少しワールドカップにどっぷりと浸っていたい。しかし、そんな余裕を世の中は許してくれない。
 さあ、支度をして出かけよう。いつもせわしないことこの上ないが、それでも僕はこの仕事が好きである。

(2022年11月29日)

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