

2011年2月15日
昭和の街の風景だった“牛乳屋さん”。実はいま、新サービスで注目を浴び、息を吹き返している。牛乳配達の歴史は古く、明治時代まで遡る。牛乳屋さんは、大きなブリキ缶に牛乳を入れ、リヤカーを引き、一軒一軒を訪問。客に出してもらった容器に量り売りをしていた。その需要が一気に伸びたのは、1950年から60年代のこと。『栄養価が高く、新鮮』と、当時、牛乳を飲む人の8割以上が配達を利用していたともいわれている。しかし、近年、スーパーやコンビニなど、どこででも手軽に買えるようになったことや、消費者の牛乳離れが徐々に加速したため、牛乳配達店の販売額は、1979年をピークに減り続けた。2万1000あった店舗も、2007年には9000にまで減少した。ところが、復活の機会がやってきた。それは、日々の“配達”という強みを生かすことだった。
千葉県船橋市の牛乳配達店『メグミルクステーション』では、5年前から米やパン、お茶などを牛乳と一緒に配達するサービスを始めた。この取り組みは、買い物に出歩くのが容易でない高齢者や共働き世帯などから大きな反響があった。結果、新規の顧客獲得にも成功したという。メグミルクステーションの眞下健さんは「長く牛乳配達を続けていくためにも、脇に魅力ある商品を並べるというのは必要な努力。お客さんのニーズに合うものを適応してやらないと取り残されてしまう」という。牛乳以外の物を届けるという新サービスは現在、大手乳業各社に広がっている。ネット時代全盛のいま、長い歴史を積み重ねた一見アナログな牛乳の配達網が、大きなビジネスチャンスとなっている。
実は、注目すべきは他にもある。それは、配達先の異変に気づくことができる点だ。茨城県ひたちなか市の牛乳配達店は、自治体からの要請を受け、高齢者の安否を確認するサービスを行っている。空の牛乳瓶が出ていれば大丈夫。高齢者が無事であることの知らせだ。ほぼ毎日、同じエリアを配達し、集金で直接、顔を合わせる。希薄になった地域のふれあいという点でも、牛乳配達店の果たす役割が見直されている。メグミルクステーションの菅野孝晴さんは「社会の中から『牛乳屋の力が必要なんだ』と言ってくれることは、すごくありがたい。僕たちの力が及ぶのであれば、協力していきたい」と話す。明治、大正、昭和、そして平成。時代は変われど、牛乳配達の存在は、いつも変わらない。