宮嶋泰子 スポーツ古今東西

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ボイスサンプル
身長
156cm
出身地
富山県高岡市生まれ鎌倉市育ち
出身校
神奈川県立外語短期大学付属高等学校→
早稲田大学第一文学部フランス文学科
入社年月日
1977年4月1日
星座
山羊座

2014/3/12    ソチオリンピックブログから

南国の冬季五輪?

取材で走り回っていたら、突然、目の前に海が現れ、
「えっ?これが黒海なの?」と叫んでしまいました。

1980年のモスクワ五輪当時、黒海と言えばこう聞かされていました。
「モスクワっ子たちにとって、最高のお土産は黒海沿岸のフルーツをバケツいっぱい詰め込んでくることなんだよ」と。
それほどモスクワには野菜も果物もなく、当時、食事の時に出てくる野菜はきゅうりだけだった記憶があります。
「黒海沿岸からの果物を・・」という言葉から黒海沿岸というのは温かく実り豊かな土地というイメージがありました。
確かに町の街路樹はほとんどがソテツなど亜熱帯の植物です。
歴代のソビエト、ロシアの指導者が別荘をここに持っており、イタリアのベルルスコーニ元首相も夏はここで過ごしているそうです。
考えてみれば、冬のオリンピックの氷の競技は寒いところで行う必要性は全くありません。
スピードスケート、フィギュアスケート、アイスホッケー、カーリング、すべて屋内でできてしまいますから施設さえ作ればよいのです。
今回も氷の競技は沿岸地域のアドレルという町で行われます。
雪の競技はそこから1時間ほど電車で移動した山で行われます。
雪が降る山が近くにある都市であれば、寒い必要はないわけですね。
アドレルの町にいる限り、今までで一番温かい冬のオリンピックかもしれません。
しかし、いったん山に入れば、マイナス10度以下の世界。
それにしてもオリンピックの効果は計り知れません。9兆円もロシア政府が投下して町が変わり、世界中にその名を知られるようになります。
温泉も湧き出るロシアご自慢のリゾート地、ソチという名前を知って、オリンピック後も世界中から人々が集まってくるという計算なのでしょう。
ホテルがいまだ建設中で、五輪に間に合わなくてもオーナーにとっては構わないのはそんな理由なのかもしれません。

 

この親にしてこの子あり

普段なかなかお目にかかれない選手のご家族とお会いできるのもオリンピック取材の面白さの一つ。
スピードスケート5000mの代表、高校生のウイリアムソン師円君のご両親とお会いしました。
今は北海道の浦河で馬の調教師をなさっているポールさんはとても愉快な方です。
かねてから師円君のメディアへの答えが素直、かつ、奇をてらったところがなく、とても魅力的なので、どうやって育てたらこんな素敵な青年になるのだろう、ご両親にお逢いしてみたいと思っていたので、なるほど、このご両親からあの息子ね、と納得してしまいました。
温かな家族の中でウィットに富んだ楽しい会話が交わされていたんだろうなあと推測してしまいました。
ご両親の悩みは、山形にスケート留学した師円君となかなか会えなくなってしまったことだそうです。
「ちょっとさびしいねえ。カムバック、シェーンだよ」と笑っていらっしゃるお父様のポールさん。
お母様は「男の子だから自分の道は自分で切り開いてほしいと思っているんですよ。」とこちらも笑顔でした。
師円君の人生初めてのオリンピックは結果的には振るいませんでしたが、きっとたくさんの収穫を彼の中にもたらしてくれたと思います。
4月からは実業団に入って、スケートを専門的に行っていきます。ピョンチャンが楽しみな18歳です。
清水宏保さん、岡崎朋美さんとウィリアムソン・ポールさんとご一緒に記念撮影です。

 

オリンピック!こんなに素敵なショーはない!

かつて日本に住む外国人の方から言われたことがあります。
「日本人は、ノーベル賞、オリンピック、国連を過大評価しすぎているね」と。
確かに昨年春にフィンランドのスポーツを取材した時に、オリンピックをあまり意識していないことに驚きました。
何故日本人がこの3つを過大評価するのかについては様々な考察が出来ると思いますが、とりあえず今はオリンピックについて考えてみたいと思います。この過大評価ゆえに金メダルの価値も金メダルへの期待も異様に高まってくることだけは確かでしょう。

オリンピックは関わる立場や経験によって見方や感じ方が大きく変わってきます。選手やコーチは、この大舞台でただひたすら良い成績を出さなければいけないと思っているでしょう。女子ジャンプの高梨沙羅さんもその一人だったと思います。
往年の名選手で今は解説をしてくださっているフィギュアスケートの佐野稔さんが、開会式に向かう途中でこうつぶやかれました。
「初めて開会式に行くけれど、なんだか、オリンピックパークの中って、ディズニーランドみたいだね。」

そうなのです。一般の観客はチケットを握りしめながら、世界一の「見せ物」を楽しみに来るのです。
ええっ?見せ物ですって?何ということを言うんだ!フトドキモノ!と激怒される方もいらっしゃるかもしれませんが、この客観的な見方を知った選手は強いです。
かつてスキー複合で金メダルを獲った荻原健司選手は「僕たちは旅芸人みたいなものです。雪のある国々を旅して自分たちの芸を見せていくんですから」と言っていました。
またスピードスケート短距離で金、銀、銅すべてのメダルを獲得している清水宏保選手も同様です。清水選手は自国開催の長野オリンピックで金メダルを期待されていただけに、そのプレッシャーのかかり方は高梨沙羅選手の比ではありませんでした。
「重圧?確かにありますけれど、それよりも、コンサートと同じで、これだけ大勢の観客の前で自分のパフォーマンスを披露できるという喜びを強く感じてました。」というのです。


右から清水宏保さん、岡崎朋美さん、そして私

おそらく今回のソチオリンピック、スノーボードHPでメダルを獲った若者二人もこんな考え方だったのではないでしょうか。
そして至極当たり前のように表彰台に立っていたスキージャンプの葛西さんもそんな一人だったような気がします。
観る人も選手も最高に盛り上がる試合、それがオリンピック!
これから競技を行う選手やコーチの皆さん、ちょっと見方を考えると、すごく楽に、そして思いっきりパフォーマンスが出来るかもしれませんよ。オリンピック!こんなに素敵なショーはない! 

 

オリンピック華やかな舞台の裏で・・・こんな選手も 

4年間、この日のために積み重ねてきても、突然、それを披露することさえできなくなってしてしまうことがあるのです。
これもまたオリンピック。
バスに揺られて1時間。山の放送センターに到着。そこからまたバスに乗り換えて20分、ロープウェイに乗って10分、いつの間にか雪が積もる道を再びバスに揺られて10分。待ち時間も含めて2時間かけて到着したクロスカントリーの会場。2月16日の14時から行われるレースは必ず山まで登って見に行こうと日本にいるときから決めていました。

4×10キロのクロスカントリーレース。この4人目の選手として出場するレンディング陽(あきら)君は3年前に早稲田大学スポーツ科学部出身。以前、6年間私が授業を担当していた時に最前列で受けてくれていた学生です。レースを見て、そのあとミックスゾーンで声でもかけられればいいなあと思っていたのですが、壮絶なシーンに出くわし、その目論見はもろくも崩れました。
JAPANは第一走から2分以上遅れ、3走がゴールをしたときにはトップと6分26秒も差を付けられ、何と周回遅れ。これによって3走から4走へのタッチが出来なくなり、4走のレンディング陽君はリレーに参加できないことになってしまったのです。倒れこむ3走の横で呆然と立ち尽くす陽君。このシーンは私の中でも一生忘れられないものとなるでしょう。
そのあとミックスゾーンでしばらく待っていましたが、あまりのショックからか陽君がそこに来ることはなく、私も次の仕事が待っていたので山を下りることを決断しました。クロスカントリーのリレーの結果を見ると、陽君のところにはタイムが記されておらず、「LAP」とだけ書かれていていました。LAPの屈辱・・・日本は世界選手権も含めて最低の16位、出場チーム中最低の成績に終わりました。

クロスカントリースキーはヨーロッパでは花形種目です。写真はミックスゾーンの様子ですが、ヨーロッパの国々はこの競技を重点的に放送しています。
しかし日本ではマイナー種目。日本のクロスカントリースキーの強化も根本的な改革が必要なのでしょう。
強化資金は、どうしてもメダルを狙えるスキー複合に回ってしまう傾向にあります。しかし、複合がメダルを獲れるのですから、強化の仕方次第で、クロスカントリスキーだって出来ないことはないという考え方も成り立ちます。また、ワックスやスキーの選択など情報の共有も必要でしょう。考え直していくべき課題は山のようにありますね。個人の力+組織の力、これが今後の日本のスポーツに求められていると思います。
陽君、へこむな!
こんな壮絶な体験をした選手はそういません。きっと大きな糧になると信じています。

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