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圧倒的パワーのブライソン・デシャンボーがメジャー初V
序盤の失速が響き松山英樹は初メジャー制覇を逃す
第120回の「全米オープンゴルフ」は、2位から出たブライソン・デシャンボー(アメリカ)が圧倒的な強さで逆転。最終日はこの日ただ一人アンダーパーをマーク。「67」にまとめ、4日間トータル6アンダーでメジャー初勝利を挙げた。
「全米アマチュア選手権」に続き全米オープンを制したのはタイガー・ウッズ(アメリカ)以来12人目。これで米ツアー7勝目。肉体改造を経てウェイトアップした新時代のパワーヒッターが、世界一過酷な戦いを力でねじ伏せた。
3日目に首位に立ったマシュー・ウルフ(アメリカ)から2打のビハインドで出たデシャンボーは、ツアー屈指の飛距離を武器にコースを攻め抜き、グリーン上でもパッティングを決め続けた。ゴルフの科学者と呼ばれ、データをフル活用しながら独自理論で戦ってきた新タイプのゴルファーが、名だたる歴代チャンピオンのリストにその名前を刻んだ。
首位と5打差の4位タイからスタートした松山英樹は、序盤から大苦戦。1番をダブルボギーとすると、2番から3連続ボギー。4ホールでまさかの5オーバーと、早々に優勝戦線から脱落。その後もスコアを落とし続け、終わってみれば8つ落とし、トータル8オーバーの17位タイで大会を終えた。
石川遼も松山と同じく8つスコアを崩し、トータル18オーバーの51位タイ。今平周吾は「82」を叩き、トータル25オーバーの61位タイで4日間を終えた。
デシャンボーと6打差の2位にウルフ。トータル2オーバーの3位にルイ・ウーストヘイゼン(南アフリカ)。トータル3オーバーの4位にハリス・イングリッシュ(アメリカ)が入った。
世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(アメリカ)はトータル5オーバーの6位タイ。ローリー・マキロイ(北アイルランド)とジャスティン・トーマス(アメリカ)がトータル6オーバーの8位タイでフィニッシュした。
アンダーパーはわずかに一人。9月開催に無観客。一度崩れると泥沼に陥る超難関コースでの大会は記憶に残るものとなった。なお、来年の全米オープンは、2008年にウッズが死闘を演じたカリフォルニア州のトーリパインズで行われる。
■松山英樹がまさかの大失速
17位タイ終戦に「疲れました」
日本人男子初のメジャー制覇はまたもお預けとなってしまった。3日目を終えて首位とは5打差ながら4位タイに浮上した松山英樹は、最終日にまさかの大失速。終わってみればこの日だけで8つスコアを落とし、首位の影を踏むことすらできなかった。
1番でティショット、アプローチのミスからダブルボギー。続く2番からもティショットが定まらず3連続ボギー。「昨日の後半から最後の何ホールかでうまくいかなかったのを修正できなかった感じ」と、ショット、パッティングともに歯車が狂いだしていた流れを食い止めることができなかった。
「すべてにおいて自信を持って打てなかったのは悔しいですけど、しっかりと今までのいいショットが打てたのでそれを4日間続けられるようにしたいと思います」と絞り出したが、日本のエースにとっては、なんとも悔しさの残る結末だった。
3日目までは、間違いなく世界トップ級のゴルフを展開。足りなかった“何か”を探し求め、次なる戦いに向けて進む覚悟の松山。「少しずつ進歩していけば勝つチャンスが増えると思います」と、秋に控えるビッグイベントを見据える。
■肉体改造、飛距離アップで絶対的な自信
ゴルフの科学者デシャンボーの目にも涙
まさに圧巻のゴルフだった。首位を2打差から追ったブライソン・デシャンボー。4番でバーディを先行させると、8番でボギーも、9番パー5ではド派手なイーグル奪取。折り返した11番でもバーディを奪い、頭一つ抜け出した。
後半はボギーを叩くことなく、上がってみれば「67」はこの日ただ一人のアンダーパー。4日間通算でもアンダーパーは一人。2位に6打差をつける圧勝だった。
「まだ信じられない。まず両親に感謝。そして、チームに感謝したい」と笑顔がはじけた。データを科学的に分析、そして今年は肉体改造にも取り組み、現在の体重は105キロ前後。そこから生まれる飛距離は今ではツアー屈指。加えて、「ツアーに出たころは下手くそだった」というパッティングも年々改善。オールラウンドプレーヤーとして、大きな成長を遂げてのメジャー初制覇だった。
ホールアウト直後は、クラブハウス前の大型スクリーンに両親の姿が映った。これを見たデシャンボーは目からつたう涙を拭った。「両親は…、僕のためにいろいろなことを犠牲にしてくれた。僕にとって一番だと思ったことをしてくれた」。独自理論で突き進む息子を時には慰め、そして言い争いもしてきた。それでも支え続けてくれた二人に心からの感謝と、チャンピオンとしての喜びをうれし涙で伝えた。
これで全米アマチュア選手権、全米大学選手権個人戦、そして全米オープンのタイトルを手にした。過去、この偉大な3冠を達成したのは、ジャック・ニクラウスとタイガー・ウッズのみ。「一生感謝したい」と、偉大な先人に並ぶ快挙に白い歯を見せた。
■ともに崩れた日本ツアートップ2
石川遼と今平周吾の4日間総括
下位スタートながら、何が起こるか分からない全米オープンの最終日に立ち向かった石川遼と今平周吾は、ともにスコアを大きく落として4日間の過酷な戦いを終えた。
「昨日はショットが良くなる感じがあったので、今日はもっと良くしていければなと思っていたんですけど、うまくコントロールできなかったのは自分の状態がまだまだだと思いますし、次からに向けて非常にいい課題をもらいました」と、今後の糧になる大会を振り返った。
「今までのマネジメントなら予選通過すらできなかった」と振り返るほどの収穫を得た4日間。世界一の舞台が、石川を強くしたといってよさそうだ。
一方の今平は予選通過者のなかで最下位に沈んだ。トータル25オーバーの締めくくりには悔しさをにじませた。「初めて予選通過できたのはすごくうれしかったんですけど、結果的にこうなってしまったのは残念です」と、決勝ラウンドでは苦汁をなめた。
「いままでで一番難しかった」としたモンスターコースは、日本の賞金王にも大きく牙をむいた。次回はマスターズ。借りを返すために、この経験を無駄にすることはできない。