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2023年9月2日長月の壱

長野・高遠町編
~運命の味!夢追い蕎麦職人~

今日の舞台は、長野県伊那市の南部に位置する高遠町。信州の名物「高遠そば」に魅了され、脱サラして蕎麦職人になった岸野靖典さん(46歳)と支える妻・知子さん(48歳)が主人公です。
大阪府豊中市出身で機械メーカーに勤務していた靖典さん。神戸市出身の知子さんと2010年に結婚し、娘の心音さんが誕生しました。蕎麦打ちの経験が一度もなかった靖典さんに‶運命の扉〟が開いたのは39歳の時。
知子さんには高遠町で蕎麦店を営む兄がおり、家族旅行で立ち寄りました。そこで「高遠そば」を食べた靖典さんは、あまりの美味しさに衝撃を受けます。「麺のうまさ、焼き味噌と辛み大根を使った独特な汁が忘れられない!」。その後、自分で蕎麦打ちに挑戦するも、短くてバラバラ、粉っぽくて、食べられたものではありませんでした。靖典さんは「高遠そば」の味を再現させたいと、どっぷり蕎麦の世界にのめり込んでいきます。そして義兄の誘いや知子さんの後押しもあり、40歳の時に高遠町に家族で移住。蕎麦打ち、汁作り、仕入れ先、経営ノウハウなどをアルバイトをしながら学んでいきました。そして1年間の修業を経て、共同シェアキッチンでランチの蕎麦店を開き3年間営業します。その間に知り合いや仲間が増え、店舗用に築89年の古民家を購入し改築。仲間も手伝ってくれ、2021年4月に念願だった高遠そばのお店『蕎麦きし野』をオープンしました。
店の開業まで少し遠回りをしたけれど、その選択は決して間違っていなかったと胸を張る夫婦。高遠そばに惚れ込み蕎麦職人の道を選んだ靖典さんと、夫の夢をバシッと背中を叩いて応援する知子さん、家族や地域の人たちの温かい交流を紹介します。

江戸時代から歴史があり、焼味噌を汁に溶き辛味ダイコンを添える「高遠そば」。靖典さんは、その日に打つ分だけを製粉したらすぐに細切り・平切りで打ちます。茹で時間は試行錯誤の末に「細切り」はジャスト40秒!「平切り」は1分!茹で上がって氷水で絞め、盛り付けたら「お願いします!」と、知子さんに。阿吽の呼吸でお客様に提供します。

靖典さんの修業先は、妻・知子さんのお兄さんが営む『壱刻』をはじめ、『梅庵』『ますや』といった名店3軒。蕎麦のなんたるかを吸収しようと1年間働きました。その後もすぐには独立せず、シェアキッチンからスタートして下積みをしっかりと3年間続けました。厳しくも温かく蕎麦のイロハから叩き込んでくれた蕎麦職人の先輩たちに、感謝の気持ちを忘れない靖典さんです。

この日はお店の定休日。知子さんは庭の畑作業を行い、友達にも自由に畑を使ってもらっています。働いた後は娘・心音さんのお友達も合流し、大阪生まれと兵庫生まれの夫婦のおもてなし、たこ焼きパーティです。
畑でとったばかりのジャガイモ、シシトウ、トマトを使って、お野菜たっぷりの料理もならびます。蕎麦を通じて、子どもを通じて、畑を通じて、仲間が増えました。

靖典さんは「そば学」の第一人者で、信州大学・井上直人名誉教授の「信州伊那そば研究会」に参加しています。プロを含む蕎麦好きが集まり、美味しい蕎麦を追求しています。現在は蕎麦の実を粉にせず、3日間水に浸け杵で潰して蕎麦にする「胴搗き(どうづき)蕎麦」を研究中。靖典さんは「高遠そば」と並ぶ看板メニューにしたいと考えています。高遠町で運命の味に出会い、人生が一変した靖典さん。これからも美味しい蕎麦を突き詰めていきます。

楽園通信

蕎麦 きし野

『蕎麦きし野』は週5日の営業。
焼き味噌と辛み大根でいただく「高遠そば」はもちろん、
本日のメニューに「胴搗き蕎麦」があったら是非お試しください!

営業時間:午前11時~午後3時
定休日:月曜・火曜

高遠 本日のそば(1,450円)二八(1,000円)