いつもおいしく旬の味わい 〜季節ならではの食感を楽しむ〜

四季がある日本だからこそ、季節季節の食材を様々な食感や調理法で味わい・・・。
年齢を重ねても、その楽しみは変わりません。食べる楽しみは、人生を豊かにします。
歯の健康と食事の関係を考え、噛みやすく、食べやすくするテクニックを紹介していきます。

「正しく噛む」ためには、身体だけでなく心身まで含めた健康を目指したいもの。噛むことと健康は同じひとつのサイクルを形成していると言ってもいいでしょう。前回「やわ噛み30回」という噛み方を紹介しましたが、まず自分の「噛む力」を知り、底上げすれば、その分長く健康でいることができるのです。

例えば、機能面で言うとまず筋力。噛む力の強弱は舌の筋力につながっていることが多い。舌の筋力が弱い方は舌っ足らずなしゃべり方になったり、口が開きっぱなしになって口が乾燥しやすいので歯周病や虫歯になりやすい。しかも口からしか呼吸できないクセがつくと、睡眠時無呼吸症候群になりやすくなってしまいます。

また噛み合わせが弱いということは周囲の組織も弱いということにもなります。噛まないのもよくありませんが、強く噛みすぎるのも決していいことではありません。正しく、バランスのいい噛み方を覚えることで、歯や周辺の機能も向上していくのです。

そして意外かもしれませんが、「噛む」ことにとって重要なのがメンタル面です。人間は緊張すると喉が渇きますが、その理由は交感神経が高まることで唾液の分泌が抑えられてしまうから。その他にも、緊張すると歯を食いしばってしまったり、睡眠中の歯ぎしりもストレスが原因ということが多い。そうした緊張状態は「Tooth Contacting Habit(歯列接触癖・TCH)」というような形になって現れます。これは「常に上の歯と下の歯がついている」状態を指しますが、この状態が続くと顎に余計な負荷をかけ、顎関節症につながるなど問題視されています。

さらに交感神経が高ぶっていることで、通常であれば無視できる程度の違和感に敏感になってしまうことも。こうなると患者さんの違和感通りに「ここが合っていない」「今度はあっちが」と歯を削っていたら、歯がなくなってしまいかねません。

「健全な肉体は健全な精神に宿る」とはよく言ったもので、心と身体は密接に関係しています。メンタリティは口や顎周辺の筋肉や「噛む」という行為に影響を及ぼし、その結果噛み合わせや歯の状態も変わってきます。日頃のストレスや心の持ち方を変えることで、正しい咀嚼が手に入るのです。

医療法人社団宏礼会
塚原デンタルクリニック院長
塚原宏泰さん


東京医科歯科大学を経て、1998年塚原デンタルクリニック開院。
以来、臨床の現場を土台に、新しいテクノロジーや技術を採り入れる気鋭の歯科医。
口腔外科、顎関節から歯周病、インプラントなど口腔周辺すべてのスペシャリスト