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2019年10月16日

子どもへの性暴力 実刑判決も残された課題

子どもへの性暴力 実刑判決も残された課題

性暴力をめぐる裁判で、大阪地裁は15日、大隅英知被告(49)に対し、懲役5年の実刑判決を言い渡した。この裁判は、子どものころに被害を受けた女性(20代)が、大人になってから打ち明けたことで始まった。起訴状によると、女性は、中学1年だった2010年の夏から1年9カ月にわたって、同居していた母親の交際相手から繰り返し、性的暴行を受けていた。彼女は誰にも打ち明けることができず、孤立。被害を受け続け、中学に通えなくなった。毎日、妊娠のことや自殺のことを考えて生活していたという。彼女が初めて母親に打ち明けることができたのは成人してからだった。結婚し子どもを授かり、警察に訴えることを決めたという。「子どもが生まれてきたこの社会が、加害者が正しく裁かれる社会であってほしい」という思いがあった。しかし、旧強かん罪(今の強制性交罪)での起訴はできず、より刑罰の軽い児童福祉法違反での起訴となった。女性の代理人を務めた弁護士は「児童福祉法違反で起訴することになったのは暴行・脅迫要件の立証が困難と判断されたから」と話す。被害者が13歳以上の場合には、殴る、蹴るの暴行や、「殺すぞ」といった脅迫があったことを立証できないと強制性交罪には問えない。日本では、性交に同意する能力があるとみなされるのが『13歳』とされているためだ。児童福祉法違反の罪に問われた大隅被告に対し、裁判長は「自らの立場を利用し、繰り返し犯行に及んだ被告人の責任は重大」と非難した。大隅被告は、裁判では謝罪の言葉を口にしたが、判決前の取材で「ばれないし、いけると思っていた。万引きと一緒」と当時の心境について答えた。
判決を受け、女性は「過去あったことに対して区切りがつくわけでもない。本質的に誰もそのことを消し去ることは絶対にできなくて、そのなかでどうやって被害にあった側が健全に生きていけるかが大事だと思うけど、それに裁判はなんの影響もしない」と語った。

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