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  reported by
宮嶋泰子

フリーコンビネーション決勝、7日間の戦いの最初のメダル争いは、優勝ロシア、2位日本、3位アメリカという結果でした。
今日はこの戦いのインサイド・ストーリーをご紹介しましょう。


ロシアの得点


フリー・コンビネーション銀メダルを獲得した日本選手たち

シンクロナイズド・スイミングのフリーコンビネーションって何?
いつからできたの?そうお思いの方もいらっしゃるかもしれません。


一昨年前までは「フリー・ルーティーン・コンビネーション」と表記されておりました。
チーム演技より2名多い10人で演技をして、時にはソロ、デュエット、トリオと次々にフォーメーションをかえていきます。シンクロの中でもエンターテイメント性が最も高い種目と言えるでしょう。


世界水泳にこの種目が登場したのが2003年のバルセロナ大会からです。このとき日本は金メダルを獲得しているんですね。確かライオンキングの音楽にのっての演技だったように記憶しています。とっても元気で一人ひとりが輝いている演技が印象に残っています。まだロシアはこの種目に出場していませんでした。


2005年のモントリオール世界水泳から王者ロシアも参戦。まるでバレエの舞台を見ているかのような演技構成で当然のように金メダルをさらっていってしまいました。


しかし、このロシアのフリールーティーンに大番狂わせが起こったのが、昨年10月下旬にモスクワで行われたワールドトロフィーでした。シンクロの芸術面だけを採点していく新しい試みで行われたこの賞金大会で、ロシアは、アメリカに敗れたのです。


その時のロシアの演目は「こうもり」。典型的なバレエ構成です。一方アメリカが演じたのが、Buddha Barのアルバムから「Men’s Dream」でした。大きなメロディーの盛り上がりがあるわけではない瞑想的な曲に載せて次から次へとフォーメーションが変わっていきます。10人の水着はすべて色が違い、それはきれいな宝石のようです。深夜、みんなが寝静まったあと、箱の中で踊りだす宝石のよう。演出をしたのは、ステファン・メルモン氏です。2003年バルセロナの世界水泳に向けて日本のデュエット立花・武田の「風邪とバイオリン」の振り付けをしたフランス人のあの男性です。ステファンの発想は、シルクドゥソレイユなどで長い間演じていた経験から、斬新で、シンクロの概念を覆すものばかりです。


今回の世界水泳もアメリカは昨年10月と同じ演目で臨みました。ステファン・メルモンしが試みようとしている新しいシンクロの世界はメルボルンの観客と審判たちの心をぐっとつかんでしまったようです。じっとプールを見つめているうちに5分間が終わってしまいました。聞くところによるとアメリカチームはこのために、サイコロジカルな集中と観客をひきつけるための特別なトレーニングを受けたとか。5分という時間がまったく長く感じられませんでした。


一方、去年11月に敗れたロシアは、すべてを作り変えてきました。選んだ曲はロッシーニーの「セビリアの理髪師」。誰もが知っている曲をバックに、バレエを思わせるような華やかさで、水上に立体的な流れるような動きを次から次へと盛り込んでいきます。タチアナ・ポクロフスカヤコーチの意地と信念が感じられる構成です。トルコブルーの衣装が金髪に映えて美しいことこの上なし。タチアナさんは以前から「シンクロしていない部分こそがシンクロの構成の見せ場です」と言っていましたが、まさに納得いく構成でした。アメリカが視覚的な動きの美しさでぐいぐい観客を引っ張っていくのに対し、ロシアは曲が先行して、それに動きがついていくというイメージです。


ロシアのFR


ロシア演技を見つめるタチアナ

一方、我ら日本チームのテーマは「ル・レーブ」。フランス語で夢という意味です。去年10月モスクワで行われた芸術ポイントだけで採点をする大会で、なんと、この演技で4位に終わり、メダルを逃してしまったのです。そのときの内容と同じものを今回出すことに対して、試合前、鶴久コーチは、「もう、ひやひやでした。」と告白してくれました。7日間のメダル争いの初日。万が一メダルが取れなければ、チームの士気にかかわり、この後の成績にも大きく響いてしまいます。


選手も全精力をここにつぎ込んだようです。「日本の技術は世界でもトップだということをアピールする演技を心がけた。」とキャプテン鈴木が言うとおり、全員の気持ちが一つになった見事な演技でした。試合後「まだ7日間の初日なんですが、もう今日で力尽きてもいいという気持ちで泳ぎました。」と鈴木キャプテンの本音を聞いたとき、今日の試合がいかに、タフなものだったかがうかがい知れました。


日本のライバルといわれてきたスペインですが、今回このフリーコンビネーションでは、去年からの演目、ミュージカル「Cats」で挑んできました。 途中のリフトで失敗してしまったのが大きく響いたのと、見慣れて新鮮さに欠けてしまったこともあり、得点が伸びず、メダルをアメリカに譲ってしまいました。選手たちの落胆振りは、痛々しいほどでした。


そのほかの面白い演技をいくつかご紹介しておきましょう。その一つがフランス。20ヶ月のブランクを経てカムバックしてきた女神ヴィルジニ・デデューがソロのパートを受け持つのですが、これがもう、見ながらうっとりと口をあけてしまうほどのすばらしさ。フランスの選手たちも、これがデデューと泳ぐ最後かと思うとさびしいといっておりました。その気持ちとってもわかりますね。


地元オーストラリアは、まだまだシンクロ発展途上国ですが、頭の飾りや水着をブルーとグレーの二色でペンギンのようにして、コミカルで楽しい演技をして会場を沸かせておりました。


オーストラリアのペンギン衣装の選手たち

音楽が途中で止まり、オヤッと思っていると、選手たちの脚が水をたたく音がドラムのように響き渡る演出はギリシャ。とても斬新でした。


詳しい結果はこちらからご覧ください。
http://www.omegatiming.com/synchro/racearchives/2007/melbourne2007/
C73_Results_FRC_Free_Routine_Final.pdf

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