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  reported by
宮嶋泰子

競技会場のロッド・レイバーアリーナの電光掲示板には前日の17日に行われたデュエットテクニカル予選の映像が映し出されています。


5年間無敗を誇るロシアのデュエット、エルマコワとダビドワは相変わらずサイボーグのような早くてシャープな動きでぴったりと同調しています。確かに技術的には他の追随を許さぬものがあるのでしょうが、曲がどんなものに変わろうとも5年間ずっとこのパターンで演技されると、いささか飽きると言うのが正直なところです。


続いて映し出されるのが、予選2位で通過した日本の鈴木恵美子・原田早穂。メルボルン入りしてからこのデュエットのテクニカルをもっとも練習してきたということですが、ちょっとばらつきが目立つところがあったように思います。しかし続くスペインのメンガルとティラドスのベテラン二人がそれに輪をかけた形で揃っていなかったのに救われた形になりました。


スペインデュエットは、去年横浜で行われたワールドカップではこのテクニカルのみ若いアンドレアがメンガルと組んでクリアーなラインを出して日本を振り切りましたが、今回再びティラドスとメンガルのベテラン二人に戻りました。聞くところによると北京五輪を睨んでどちらで行くべきかテストをしているとのこと。五輪までは一年半あるので、各国ともさまざまな思惑でこの南半球で行われている大会に臨んでいるようです。


北京五輪をにらんでと言えば、この世界水泳の台風の目は中国です。
デュエットの選手は身長175センチの双子の蒋姉妹。WenwenとTingtingです。これまで中国のシンクロといえば、つるつるっとした動き、いわゆる緩急があまりなかったのですが、井村雅代コーチが今年からナショナルコーチに就任してからそれが変わってきました。井村コーチがこの2ヶ月で教え込んだことは「パワーあるシンクロの見せ方」です。泳ぐスピードを速め、緩急をつけ、筋肉を締める方法を教えられたことで、二人の動きはアジア大会のときよりも確実に進歩してきました。


カタールで行われた昨年12月のアジア大会で、日本の鈴木・原田が中国の蒋姉妹に敗れたことは日本のシンクロ界に大きな衝撃を与えました。とは言え、その時点ではアジア大会の審判の未熟さを挙げる関係者もいるなど捉え方は人それぞれでした。


しかし、その直後の井村雅代さんの中国コーチ就任のニュースは、日本のみならず世界中の関係者の目を覚まさせるに十分な効果がありました。シンクロはおおよそ順位が予測できる競技といわれてきましたが、今後は順位がまったく予測できなくなりそうだと皆が直感したのです。


中国チームを指導する井村コーチ

今回、中国の成長を見ながら、「1990年代初期のソビエト・ロシアにそっくり」と話す声が聞こえてきました。1996年まではアメリカ、カナダ、日本の三か国でメダルを分け合ってきたのですが、この年のアトランタ五輪の翌年、突如ロシアが世界の頂点に立ちました。それまで美しい脚を持ちながら、どこかピントのずれた演技をしていたロシア。タチアナ・ポクロフスカヤがナショナルコーチに就任したとたんに演技構成ががらりと変わり、あっという間に1位の座についてしまったのです。前年まで4位だった国が一足飛びに優勝することなどシンクロの歴史にはなかったことです。


「まるであのときのロシアのようだ」と言う言葉が意味する結果は、この大会で、さらには来年の北京五輪で明らかにされることでしょう。シンクロが俄然面白くなってきました。


デュエット・テクニカルルーティーン予選の結果はこちらからどうぞ。
http://www.omegatiming.com/synchro/racearchives/2007/
melbourne2007/C73_Results_Technical_Duet_Prelim.pdf

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