前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー
 
 
11月5日 渋井陽子と土佐礼子 その強さの裏にあるもの


<昆明での高地トレーニング>

高地トレーニングとして有名なのは、高橋尚子選手や有森裕子選手が行っていた米国コロラド州のボールダーですが、鈴木監督は中国の昆明を選びました。標高1981メートルでボルダーよりも300メートルほど高い所にある街ですが、どうやら鈴木監督がここを選んだ理由は高さだけではないようです。

宮嶋「中国でトレーニングをするようになってからどのくらいたつんですか?」

鈴木監督「もう5年になりますね。」

宮嶋「ここでやるメリットっていうのは、なんなんですか?」

鈴木監督「高地って言うのでスピードそれほど上げなくて、心肺機能を鍛えられるっていうのがありますけれど。ただ練習内容は難しくなりますけれど。最初どのくらいでやっていいかわからなかったんで、手探りでしたけれど、今はもう大丈夫ですね。トラックならトラックの練習内容で、内容とタイムでわかってきましたから。」

宮嶋「高地であれば、ボルダーとかアルバカーキとか米国に行く選手が多いように思うんですが、」

鈴木監督「もう一つは時差がないんで。そういう点は試合にあわせて帰れるんですよ。」

宮嶋「ほかには?」

鈴木監督「後はもう、これだけ不便ですから、集中できるという面ではいいですよね。人間ですから誘惑があればそっちへ行くけれど、ここは出かけていくところもないですからね。」

宮嶋「ショッピングも出来ないですね。」

鈴木監督「買うものもないですよね。」

宮嶋「選手はたくましくなるのかな。」

鈴木監督「渋井の場合は1番最初ここでやって記録上がったんで、その良かった印象が頭の中には残っているでしょうね。本当に、なんにもないですよね。練習するしかないですよね。練習して食べて寝て、それしかないんですから逞しくなりますよ。耐えられれば。ここでたえられない子もいるんですよ。ここで耐えられればどこへいっても大丈夫。本当に40年前って言う感じですよね。」

選手たちは昆明での高地トレーニングをどう思っているんでしょうか。
新人の大山選手と、土佐選手に話を聞いてみました。

大山「ずっと走っていけるし。余計なこと考えなくてもいい。日本にいるよりも、ここにいるほうがあっという間に距離を走っている気がします。」

土佐「ホームグラウンドですね。こっちのほうが何にもないんで、ボルダーだと癒されるんですけれど、こっちは何もないんで、本当に走るだけなんで集中はできると思います。」

取材クルーの上岡カメラマンと国吉VE

昆明の町はエネルギーに溢れかえっています。リヤカーに生きた鳥が積まれているかと思えば、赤ちゃんがちょこんと乗っていたり、路上で包子を作るための火を起こした七輪まで載っているのです。中国人がたくましく「生きる」様を見せ付けられる街、昆明。日本の40年前、物が無かったかつての日本の状況と同じような環境の中で、選手たちは集中しながら知らず知らずのうちに、ハングリー精神を培っていくのでしょう。

さらに、昆明にはさまざまな練習環境が整っていることもあげられます。ここはかつて世界中をあっと言わせた長距離集団、馬軍団の本拠地でもありました。練習するためのアップダウンのあるコースには事欠きません。また西山と言って1300段の階段で頂上まで登れる山もあり、その階段を利用してのトレーニングは高地にあって萎えがちな脚の筋肉を鍛えるのには最高です。

これが西山の1300段の階段。

さらには、なんと温泉まで湧いているのです。疲れた体を休めるのにはもってこいの条件です。今、日本では日帰り温泉がブームになっていますが、ここにもなぜか「富士温泉」と言う名前で、富士山の絵が書かれた銭湯風の温泉がありました。日本の影響なんでしょうかねえ?この富士温泉に鈴木監督も時々訪れるそうです。

富士温泉

こうした環境が気に入り、今では鈴木監督は日本にいるよりも昆明にいる時間のほうが長くなっているとのこと。それもうなずける走るためには最高の環境でした。

→次のページでは渋井選手と土佐選手にインタビュー

←上意下達ではなくコミュニケーションを

   
 
    
前の記事を読む 次の記事を読む  

トップ > パーソナルトップ > プロフィールトップ > エッセイバックナンバー