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11月5日 渋井陽子と土佐礼子 その強さの裏にあるもの


<何もしない鈴木マジック>

7月下旬、チームは北海道の別海で合宿を行っていました。
早朝5時50分、練習が始まると、選手たちは思い思いに好きな方向へ走り去っていきます。
渋井選手の目標は10月のシカゴマラソン。
土佐選手は1月のマラソンを計画しています。
選手たちはたった一人で、自分の体と対話をしながら走りつづけます。

 

選手たちが黙々と朝練習をこなす間、鈴木監督は散歩を日課にしています。

鈴木監督「こうやって散歩していて、選手も見ないで、給料もらえて幸せだなって。高地トレーニングをしている中国の昆明ではいつも70分ぐらい歩きますよ。ちょうど一周すると70分なんですけどね。朝飯がうまいんです。本当ですよ。昆明だとうどん。うどん3杯食べちゃいますよ。」

宮嶋「朝練習から選手と一緒に走る監督さんもいますよね。」

鈴木監督「いますね。でも嫌がっている選手もいるんじゃないですか。だから自分なんか、選手が一人だと走ります。でも、誰かほかの選手が一緒にいたら走らない。そうしないと、全員の選手と走らなきゃならない。やっぱり選手同士でよくみているんですよ。」

宮嶋「監督がえこひいきしていると思う選手がいるかもしれないとうことですか。」

鈴木監督「あの人ばっかりと一緒に走ってとかね、思うんですよ。だから、一応気をつけますよ。だって自分が走って逆に変に思われちゃうもの。だからマンツーマンで練習しているときは、ジョギングとかダウンとか結構一緒に走ったりしますけれど、誰かいたらしない。することで逆効果になっちゃう。」

朝練習に選手たちが出かけた後、一人黙々と散歩をしている鈴木監督には実は深い考えがあったのですね。選手と監督が一緒に走るという一見何気ない行為に対しても、選手たちの気持ちを深く読んでその先の行動にでていたのです。この細やかな心配りに、同時に二人の選手を上手に育てていくひとつのカギがあるように思えました。

マラソンは最後は一人の闘いです。実際のレースになればコーチといえども何も手伝うことが出来ません。一人でも自分の心をしっかり見つめ、レースを作っていける逞しい選手を作るために、小さな仕掛けがたくさんありました。合宿所を覗いてみると、選手たちが思い思いの時間に自分の部屋で腹筋や背筋を鍛える補強トレーニングをしているのです。

宮嶋「ここではみんなばらばらに補強運動をしているんですか?」

土佐「ばらばらです。やり方もばらばらです。どのやり方が一番腹筋を鍛えるのにいいのかもよくわからないし。結構みんな何がいいとか、言っていますけれど、やるのはばらばらです。」

宮嶋「いつやっているんですか」

土佐「合宿のときはお昼前とか、朝錬終わったりとか、渋なんて、時間があったらやっています。」

宮嶋「そういえば、渋井さんの趣味は腹筋って言っていましたよね。渋井さんの腹筋も凄いでしょう。」

土佐「割れてます。ぼこぼこ」

宮嶋「監督とか補強とかに関しては何か?」

土佐「いや、何も言わないですね。走る以外。走るのもいわない時もあるし。練習メニューだけは別ですけれど、適当なのかな?」

そこへ現れた鈴木監督。

宮嶋「監督は補強などはぜんぜん見ないと聞いたんですけれど。」

鈴木監督「練習終わったら各自トレーニング室にいったり、自分の部屋で適当にやってますよ。全体で行くぞというのはないですね。各自やっていますね。自分でやりだすのが1番力つくんじゃないですか。だから本当に見ていないです。刺激されて後輩もやっているよな。だから楽。何にも指導していない指導者。土佐があそこでうなずいているよ。本当にそうだ、でも言いづらいよな。って・・・やなやつ!(笑い)」

土佐「何なんですかね?監督さんは」

自分でやる気を起こさせる環境を作っていくのが鈴木マジック。
でも本当に何もしていないんでしょうか。
いえいえ・・・・

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