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身長
177cm
出身地
埼玉県さいたま市
出身校
県立浦和高校→
早稲田大学
入社年月日
1992年4月1日
星座
天秤座

2018/10/2 この夏の災害取材を通して。

今年の夏は、大雨による土砂災害や大地震など自然災害が多かったですね。私は7月の西日本豪雨では連日広島県内の被災地を取材し、9月の北海道胆振東部地震では発生直後から震度7を観測した厚真町に入り取材しました。現地では両地域ともに自然災害の猛威をまざまざと見せつけられました。

西日本豪雨の被災地広島では、広島市、呉市、坂町などの各地を3週にわたって取材しましたが、訪れたすべての場所で、あまりの被害の大きさに衝撃を受けました。コアストーンと呼ばれる直径2メートル以上ある巨岩が住宅を押しつぶし、地域特有の真砂土と呼ばれる非常に細かい土砂が住宅に流れ込み、その量は多いところで床上1メートルほども家の中を覆い尽くしていました。

この災害を引き起こしたのは広島に降ったとんでもない量の雨です。地元の方々も「土砂降りの雨が3日ほど続いた。これまでにない降り方だった。」と話していました。広島県では4年前にも広島市安佐南区などで77人が亡くなる土砂災害がありましたが、今回はあの時よりももっと広範囲で大量の雨が各地域を襲ったのです。

さらに今回、降り続く大雨に違和感を覚えながらも避難所には行かずにご自宅に留まっていて被災したという方が多くいました。気付いた時には裏山が崩れ自宅の一階が土砂に覆われてしまった方や、家の前の道路が濁流の川のようになってしまい逃げられず大変怖い思いをしたと話す方もいました。

みなさん共通していたのは、まさか自分のところは被害に会わないだろう、という意識の下、家に留まっていたということです。人間は危機に直面した時に自分は大丈夫だろうという心理状態に陥るといわれています。いわゆる正常性バイアスという行動心理です。しかし、その心理が被害を拡大させてしまうのです。
大雨などで少しでも違和感を覚えたら、念のため明るいうちに早めに避難しておくという行動こそが、命を守るために大切なのだと改めて感じました。

一方で、北海道では震度7の揺れに襲われた厚真町で異様な光景に息をのみました。山間の地域で住宅に隣接した裏山が、どの山もほぼ例外なく大規模な土砂崩れを起こし、多くの住宅が飲み込まれていました。ひどいところでは幅2キロほどにもわたって一気に山が崩れ、山肌をあらわにしていました。

実は北海道厚真町では、7月の広島などの西日本豪雨災害の甚大な被害を受けて、8月中旬から土砂災害のビデオなどを見せながら警戒を呼び掛ける住民説明会を地域の集会所などで連日行っていました。
しかしそれは大雨による土砂災害を想定したハザードマップに基づくもので、今回のような大地震による土砂災害は想定外だったのです。実際、厚真町のハザードマップで警戒対象になっていない多くの場所も今回の地震で土砂崩れを起こしてしまったのです。

現地を調査した専門家によれば、厚真町の地盤は、過去に降り積もった火山灰の層と黒土の層が入り混じって出来ているそうです。火山灰の層は水分を通しやすく黒土は水分を吸収しやすいという特徴があります。厚真町には地震の直前に通り過ぎた台風21号の影響で相当量の雨が降り、その雨が火山灰層を通過して黒土にしみこんでいたと専門家はみています。台風の雨で弱くなっていた地盤を、震度7の揺れが直下から襲い、大規模な土砂崩れにつながったのではないか、と分析していました。

この夏、あらためて日本は災害大国なのだと強く実感しました。今年の夏は大変な暑さでしたが、今後も温暖化が進み、経験したことのない大雨が各地を襲う可能性が十分に考えられます。さらに、厚真町のように、巨大地震は日本中どこで起きてもおかしくはないのです。
この夏の災害を他人事とはせず我が事として捉え、次の災害の被害を最小限に抑えるよう備えることが何よりも大切だと、今強く感じています。

最後になりましたが、今回の取材では広島でも北海道でも、被災した大変な状況の中でも多くの方が私たちの取材を快く引き受けてくださり、貴重な証言を聞かせてくださいました。改めて御礼を申し上げますとともに、皆様の日常の生活が一日でも早く戻りますよう心よりお祈りいたします。