担当者
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- Reported by
下村彩里
ある日
アナウンス部の一角にある本棚の扉を開けると……!
本の奥には、ノートやスクラップがずらり。
味のある色に変わった歴史を感じるノートたちが並んでいました。
パソコンが普及する前、先輩たちは
当たり前のように
全て手書きで、全部手で切り貼りして資料をまとめていたということを
改めて目の当たりにした瞬間でした。
「先輩たちはそれぞれ、どんなノートを使っているんだろう?」
学生時代はよく友人同士でノートを見せ合ったりしたものですが、
仕事のノートを覗く機会ってなかなかありませんよね。
もっと詳しく見てみたい、知りたい!
そんな思いから
今回は
森下アナ、大西アナ、並木アナ
3人のアナウンサーの
仕事で使っているノートを覗かせてもらいました!
秘密のノート1
こちらのノートの持ち主は・・・・・・
全米・全英オープンなど30年以上ゴルフ中継を担当。
さらに競泳の北島康介選手や、マラソンの高橋尚子選手をはじめとする
五輪の金メダル実況を担当してきた森下アナ。
アテネ五輪の「やっぱり北島強かった」という実況は、
当時小学生だった私も強く惹きつけられ、忘れられない言葉です。
ノートの表紙の“10“はテレビ朝日がアナログ放送時の10ch(現在は5ch)を表している。
30年以上前に使っていたノートなど、
沢山の貴重なノートを見せてくれた森下アナ。
中でも私が印象的だったは......!
2000年に開催された
「シドニー五輪」のマラソン実況ノート!
高橋尚子選手が金メダルを獲得した
舞台の裏側に迫ります!
まずこちらは大会半年前にシドニーの現地コースを下見したときのノート。
ポケットに入るサイズがポイント
なんとこの地図とメモは“歩きながら”書いたそう!
周りにどんな建物があるかだけではなく
「路面左傾斜」「右端だけ平ら」など、
自分の足で歩いたからこそわかる情報が
沢山書き込まれていました。
さらにこれらを「大きな1冊のノート」の整理。
ノートは見開き1ページに5km分の情報が満載。それが42.195㎞まで続きます!!
選手の資料も手書き
実況のブース内は狭く、
移動車に乗って車の中で実況することも。
資料はかさばらないように
“1冊にまとめる”ことが大切だそうです。
そして、やはり私が気になったのは・・・・・・!!
左上の“35k”というメモに注目!!
高橋尚子選手が
サングラスを投げ、勝負の合図のごとくスパートを切った
あの名シーン!!
「高橋サングラスを捨てた!」
と、森下アナがその様子を実況したのは
まさにこの35km手前地点!
だったそうです。
高橋選手はサングラスを投げた後、スパートをかけそのまま押し切り、
2時間23分14秒の五輪最高記録で金メダルを獲得しました。
森下アナがこのノートのページを開いて実況しているときに、
歴史的名シーンが生まれたんだ!!と思うと、鳥肌が。
私はノートに釘付けでした。
森下アナにとって
紙のノートの魅力は?
僕にとってはこのノートが、“ノートパソコン”みたいなものだったよ。
昔はパソコンがなかったからね。資料を1つ1つ切り貼りして試行錯誤して作った。
だからどこに何が書いてあるか、すぐに自分にはわかる。
ノートを開きながら、色んな話をしてくれた森下アナ
ノートには、まさに“試行錯誤”した跡が刻み込まれていて
森下アナの「伝えるぞ」という思いが
ギュッと詰まっているように感じました。
一方で、
同じようにスポーツ中継を担当するアナウンサーでも
ノートに大きな違いが……!!
秘密のノート2
大西アナの秘密のノートは
パソコンの中にありました!
実況資料を“エクセル”で作成。
なんという精密さ!1つの画面に情報が敷き詰められています!
入社して初めてのプロレス実況は
「まだ手書きで資料を作成していた」
という大西アナ。
徐々に今の形に切り替えていったそうです。
大西アナにとって
エクセルを使ってスポーツ資料を作る魅力は?
①見やすい
(私の字は絶望的に汚い。)
②ミスが減る
(年齢も自動計算。色付けの指定などをしていれば見落としもない。)
③資料ロッカーがかさばらない
(私のロッカーはもう一杯です。)
④作業効率が上がる
()の言葉から心の葛藤が伝わってきます……!
膨大な情報を整理するのは大変ですよね。
④の作業効率について詳しく聞くと。
意外とスポーツの現場では資料作りで時間に追われることも多くあります。
例えば競泳の中継の場合、午前中に予選があり、午後に決勝があります。
決勝の資料を作ろうとしても、予選の結果を受けて、出場選手が決まらないと作れません。
手書きであれば、もう一度書くか、切り貼りをするかになります。
しかし、字が絶望的に汚い私は、手先も絶望的に不器用でもあり……。
PCであれば、予選の結果を打ち込み、“コピペ”をすればすぐに完成します。
枠組みさえ作っておけば、現場での作業は最小限で済みます!
自動計算や色づけの設定をしている様子
放送席の限られたスペースに置ける範囲で、
いかに見やすく的確な実況資料にするか、
それを考えると、私にはPCで作ったものの方が合っているようです。
スポーツ実況に携わるアナウンサーのほとんどが
エクセルで資料を作るようになったそうですが、
今も「手書き」と「エクセル」を
時と場合によって使い分けているアナウンサーもいたり、
方法は人それぞれだそうです。
“時間がない中で、いかに的確な情報を伝えることができるか。“
先輩のやり方を真似したり、自分でアレンジしたり
試行錯誤を繰り返している
実況アナウンサーの普段見ることができない
仕事の裏側を垣間見ることができました。
秘密のノート3
そしてもう一人、
異質なノートを見つけました。
このノートの持ち主は
並木アナの秘密のノートは
なんと
「液晶タブレット」
並木アナはこれ一台で、
仕事の打ち合わせもリハーサルも参加しているんです!
若手の割にアナログな私は、
初めて並木アナのその姿を見たときは、
「さ、さすが……!!!」と驚きを隠せませんでした(笑)
使い始めたきっかけは?
「ミュージックステーション」のリハーサルで
台本を確認するために使ったことがきっかけでした。
液晶タブレットの中に台本も取り込むことができ、好きな場所にメモも書き込むことができます!
並木アナにとって
液晶タブレットの魅力は?
①薄くて軽い!
以前は紙の台本を使っていたのですが、年末の「ウルトラスーパーライブ」では6時間越えの生放送ですので、ページ数が1000ページになることもあります!!
タブレットは薄くて軽いので持ち運びやすく、
マークをつけておくと見たいページに一気にジャンプできるのもいいですよね。
②すぐに共有できる!
本番前に台本の修正や大幅な変更があっても、クラウドで管理しているので
瞬時に皆さんに共有できるのでそちらも便利です。
③手元が暗くても見える
リハーサル中は照明を調節するため、手元が暗くなることも。そんな時も台本を確認したり、メモをとることができます。
④地球にやさしい
紙の使用量を抑えることで、地球にも優しいですよね。
ミュージックステーションのリハーサルの様子
今はスマートフォン1台で
電話、財布、メモやスケジュールも管理もすべてが完結する時代に。
“ノート”の形も徐々に変わってきているんですね。
そんな中
それぞれのアナウンサーが
本番で最大のパフォーマンスを発揮できるように
自分にあった方法で
「アナログ」と「デジタル」の狭間にいる私たちは、
ある意味どちらも自分自身で“選択できる”
贅沢な時代にいるのかもしれません。