世界の車窓から

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ドイツ編 撮影日記

さまざまな国からやってきた若者たち
奇跡のような出会い
ロケ9日目、ハンブルクからバルト海沿岸に位置する旧東ドイツの町、ロストックへ向かう。車内で稀有な出会いに恵まれた。様々な国から移民してきた10代の高校生たちで、ドイツの歴史と文化を学ぶ研修旅行の帰りだという。彼らの母国はポルトガル、アルメニア、アゼルバイジャン、ベトナム、アフガニスタン、シリア・・みんなバラバラ。それぞれの家族の人生の選択と決断、そして、たくさんの偶然も重なって奇跡のように巡り会い、今こうして一緒の列車に乗っている。我々が、この日、この列車に乗っているのも、たまたま。そう考えるとセンチなジジイは目頭が熱くなってしまう。別れ際に全員の記念写真を撮ってメールで送った。こういう出会いがあるから「車窓」の仕事は楽しい。何年やっても飽きることがない。
翌日からは、バルト海沿岸を走る蒸気機関モリーを撮影。モリーとはドイツ語で、「ぽっちゃりとした」という意味。市街地の狭い通りを路面電車のように走る世界でも珍しい蒸気機関車で、その歴史は100年以上になる。「世界の車窓から」は今年1万回を越えた。放送開始からは30年​目を迎えている。1000回を越えたとき、「もう1個ゼロが増えたらすごいね」なんて冗談言ってたら、本当にそうなってしまった。「もうロケなんて出来ないジジイになってるな」なんて言ってたのに、まだやっている。私が作ったのは700〜800回分ぐらいになるんだろうか。でも、いいのが出来たと思える回は数えるほどしかない。やればやるほど奥が深い。先のことはわからないけど、体が元気な限り、頭がボケない限り、続けたいと思っている。もう相当崖っぷちだけどね。再来年、「悲しきシルバー撮影隊」は200歳を迎えます。
13日目、ドイツロケの最終日。ハンブルクから国際列車に乗り込み、4つの島を渡ってデンマークの首都コペンハーゲンへ向かう。中央ヨーロッパから北欧へ鳥が移動するルートと同じことから、「渡り鳥ライン」と呼ばれている人気の路線。今となっては珍しい列車ごとフェリーに積み込まれて海を渡る。
ディレクター 福本 浩
街中をゆく蒸気機関車モリー
湖の間を走るロストック行きの列車