世界の車窓から

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ドイツ編 撮影日記

ライン川沿いを走る列車と背後にみえるシェーンブルク城
車窓は自分を映し出す鏡
4年ぶりの車窓ロケ。ドイツは2006年W杯以来だから10年ぶり。その時と同じコーディネーターとドライバーに再会。気分は同窓会。こちらのメンバーと言えば、私、撮影、技術の3人の年齢を合わせると194歳という超高齢スタッフ。
40代の頃から「哀しき中年撮影隊」と名乗ってきたが、もはや「哀しきシルバー撮影隊」。
こんな白髪頭のジジイたちがドカドカと列車に乗り込んでカメラを向けたらどうなるのか・・不安を抱えながらロケは始まった。
旅の始まりはフランクフルト。
午前中は市街と列車の走りの撮影で、午後はライン川沿いを走る列車を乗り継いでケルンへ向かうというスケジュール。
朝は快晴だったのだが、列車に乗り込んでから天気が悪化し、ついに雨が降り出した。せっかく、これまで見たことがない運転席の窓からのライン川を撮ろうと許可をもらったのに・・・
でもね、雨のライン川、意外に良かった。晴れてきれいな絵は子供っぽい。雨の映像には奥行き、深みを感じる。大人の車窓だ。随分やせがまん入ってるけどね。それと列車に乗るといつも思うのだが、車窓を見つめている乗客は、みんな遠い目になる。車窓を見ているというより、子供の頃を思い出したり、将来のことを考えたり、自分の内面を旅しているのだと思う。車窓には、そんな力がある。以前ナレーションにこう書いた。「車窓は自分を映し出す鏡」・・その思いをまた強くした。
この番組をやっている若いディレクターと話した時、 “「車窓」を作っていると自分が裸になってしまう。そうしないとできない” と言っていた。編集も選曲もナレーションを書くのも自分1人。しかも毎回60〜70本ぐらい作らなければならないから、どうしたって、それまでに何を蓄積してきたか、何を考えて生きてきたかが番組に出てしまう。作り手にとっては、「車窓」という番組もまた「自分を映し出す鏡」なのだ。あちゃー、また年寄りくさいことを書いてしまったなあ。お許しあれ。
ディレクター 福本 浩
運転席から見る雨のライン川
大きく蛇行する川