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オーストラリア編 撮影日記

カラフルなVラインの車両
マナー表示に思う
ビクトリア州の州都メルボルンを起点に、州が運営するVラインに乗車した。Vラインはメルボルン近郊や中距離を走る鉄道で、今回は内陸の町エチューカまで向かう。車体は流線型で美しく、運転席も飛行機の操縦席のように洗練されている。その車内で、「クワイエット・キャリッジ」という車両を見つけた。直訳すると「静かな車両」、つまりここでは大きな音をだしてはいけない。大声はご法度、音楽機器やパソコンなどの音量にも注意を払わなければならない。走行音は同じように聞こえてくるのだが、車内は確かに静かだ。図書館の中にいる時の、パソコンのキーボードを打つ音すら響き渡るかのような張りつめた空気感が漂っている。乗客は普通車両より多いくらいで、ザッと見渡したところ、寝ている人もいない。取材向きではないなと思い、普通車両へ移動。ここもクワイエット・キャリッジと同じくらい静かだった。今回見た限りでは、赤ちゃんや子供連れは、普通車両に乗っていた。親子連れは普通車に乗らなければならない、という決まりは無くて、親が自ら判断してのことだろう。
車内には、デッキと網棚のあたりに、マナー表示が貼ってある。自転車を載せる際のマナーなどオーストラリアらしいものも含めて全部で9項目。日本よりも細かい。日本では、常時貼付してるのは携帯電話と禁煙くらい。この違いは、オーストラリアの人たちに、マナー違反が多いからということではなく、おそらく、パブリック、公共の場に対する考え方の相違からだろう。そう言えば、駅の階段やホームで、携帯電話を見ながら歩いている人を、今回は一人も見かけなかった。どうしてこうも違うのか。さりとて、マナー表示を細かくベタベタ貼られるのも抵抗感がある。先人の知恵、「江戸しぐさ」のように、粋にさりげなく、くらいが日本らしくていいなと思うのだが、東京オリンピックを機に、江戸しぐさを見直してみてはどうだろうか。
ディレクター 浦野 俊実
エチューカ名物 外輪蒸気船
クワイエット・キャリッジの車両にある案内表示