以前「オスギハイクラ」のDVD編で紹介した「初恋のきた道」。その監督であり、鬼才と崇められるチャン・イーモウが手掛けた大作が「HERO」です。ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーら豪華キャストが登場。衣装は黒澤明監督作品でその手腕を発揮したワダエミが担当。紀元前の中国戦乱の時代を、ド迫力の演出＆アクション、赤・青・白を基調としたビビッドな映像で描き上げています。物語は紀元前200年の中国。天下統一を目前にした後の始皇帝・秦王（チェン・ダオミン）の前に、無名と名乗る剣士（J・リー）が出現。刺客3人を倒した功績を認められ、無名は王に30歩の距離まで近づくことを許されます。無名は秦王暗殺をたくらみますが…。中国で大ヒットし、奇蹟と称された本作品。酷評した「初恋がきた道」とはまったく異なるテーストの作品ですが、今回のおすぎさんの評価は？ 配給：ワーナー・ブラザース映画 もうすっごいわよ！　大事なところがすべて突出してる！　話はとにかく面白い!!　のちに始皇帝と呼ばれる王様は、3人の暗殺者に狙われてることを恐れてたの。ある日、突然男が現れて「その3人を殺しちゃいました」って、3人を殺した過程を話し出すのよ。すると王様は「それはウソだ。お前は何者なんだ!?」って言うのね。男が「実はオレは…」って振り返った途端に、話がガラッと変わってくるのね。それにワイヤーアクションを使って、これ以上素晴らしい画面はないってくらい。空は駆けていく。湖はすっ飛んでいく。女同士の素晴らしい一騎打ち…息を止めて見ちゃう！　私はほとんど地獄を見てるような状態で見てたんですけど。それにチャン・イーモウという監督さんは、それだけ生臭い話で一滴の血も見せないの！　こんな風に見せてくれた中国映画はない。私は5000円払ってもいいかなって思ってるの。慎吾ちゃん、ぜひ見なさい！ 多くの書物や映画で描かれる始皇帝ですが、いったいどんな人物だったのでしょう？　彼の名は政。呂不意が「奇貨居くべし（すごい掘り出し物だ）」と言って見つけてきた秦の公子子楚の息子で、13歳で秦王として即位しました。その後、秦によって戦乱の中国統一を実現。「自分を始皇帝として、2世、3世より万世へと伝えていく」と言い、皇帝という地位を築き上げました。完全な中央集権化を目指し、度量衡を整え、文字と軌道を統一。才能ある人を前歴にこだわらず採用したり、法治国家を目指したなど、良い点は多々あるのですが…。始皇帝といえば悪名高い面が目立ちます。中でもひどかったのが「焚書坑儒」。医学、農業関係の書以外の思想書を提出させ焼き捨て、儒者400人を穴埋めにしたんです。万里の長城の建設を行ったのも彼。ほかにも始皇帝陵の建設が有名です。そんな始皇帝は晩年、不老不死の仙薬を望みました。が、その薬は間に合うことなく、49歳で生涯を閉じたのです。秦も彼の死後4年あまりで滅びています。 中国では昔、自国のみで映画制作をしていましたが、資金不足から地味なものばかりでした。そこで外国出資を受けて、制作を始めることに。中国の良さを残しつつ、ワールドワイドかつ壮大な作品を次々と作り始めました。中国でも映画は大人気。中国では日本と同じように、デートで映画館を訪れるカップルも多いとか。大ヒット作品のほとんどはハリウッド映画など洋画です。タイトルは日本では邦題がつくことが多いですが、中国ではオリジナルをそのまま訳したものを使用します。キャスト名は発音に忠実に、漢字を当てはめて表記。街中でもマクドナルドが“麦当労”、ケンタッキーが“肯徳基”と表記されているのを目にしますが、あれと同じノリですね。字幕は英語と中国語を同時に流します。ちなみに、中国映画でも北京標準語の字幕がつきます。広東語や上海語は発音は違いますが、表記は北京語と同じため、このような処置がとられているんです。また、ヒット作品の海賊版がすぐに出回るのも中国ならでは。劇場内でスクリーンを撮影したビデオなどが売られていたりします。さらに、グッズも勝手に作り売ってしまうんです。ほかにも検閲が厳しいことも、中国の特色。共産党に対して否定的な発言が一言でも入っていると、許可されないそうです。

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