2010年9月18日(土) 午後4時 放送 都のかほりスペシャル 彩りの古都をゆく 1300年目の秋 奈良と赤の物語

旅人:片瀬那奈 内山理名
興福寺国宝館

昨年日本中の人々を虜にした“日本一有名な仏像”、興福寺の「阿修羅像」。現在はリニューアルされた国宝館でそのお姿を拝見することができます。ご本尊の「千手観音菩薩立像」をはじめ、奈良時代から江戸時代までの国宝64点を含む仏像・寺宝の数々。中でも「八部衆」と呼ばれる仏像群は一番の人気を集めています。





その中央に立つのが「阿修羅像」。天平時代の傑作とされる三面六臂の仏像です。向かって左側は唇をかみしめやや反抗的な顔、右側は自分の過ちに気付き苦悩する様子。そして正面は釈迦に導かれ和らぐ瞬間の表情とされています。元は戦いの神であったことから、作られた当初は“怒り”を表す赤色に塗られていたとか。その名残りを見ることができます。憧れの「阿修羅像」に初めて対面した2人の心には、何が浮かぶのでしょうか。

奈良国立博物館

作られた当初の「阿修羅像」の姿が見られると聞いて訪れたのが「奈良国立博物館」。そのお姿は、想像を超えたものでした。鮮やかな紅色の体に極彩色の衣をまとった「阿修羅像」。1981年から5年の歳月をかけ、天平時代の技法そのままに再現された復元模刻です。赤い色は古来の顔料である「水銀朱(辰砂)」と「鉛丹」という2つの鉱物が使われていたそうです。そのお顔には、興福寺では気付かなかった「髭」らしき文様も…本物とはまた違った魅力にひきこまれます。

薬師寺

710年に創建された古刹・薬師寺の壮大な伽藍。旅人の目に飛び込んできたのは、並び建つ二つの三重塔。1981年に復元された西塔と、1300年前に創建された当時の姿そのままの東塔です。作られた当時は柱や軒の鮮やかな朱色と連子窓の青が特徴的だったとか。東塔の前に立ち復元された伽藍を眺めると…それはまさに、奈良時代の人々が実際に目にしていたであろう風景1300年の時をタイムスリップしたかのような気持ちになります。
この東塔は11月から解体修理に入るため、現在の二つの塔を見られるのはこの10月いっぱいです。

奈良町

風情ある町並みが今も残る「奈良町」。かつての大寺院・元興寺の境内だった場所に、江戸時代以降人々が移り住み作られた町です。家々の軒先に吊るされている赤い物体は「身代わり申(さる)」。地域の人々に信仰されている「庚申(こうしん)さん」にちなんだ厄除けのお守りです。





ここで2人は「燈火器」という美しい工芸品に出会います。作り出したのは赤膚焼の職人である武田高明さん。陶器に様々な形をくりぬき、中にロウソクを入れ、壁や床にうつる紋様を楽しむ道具です。その世界は、幻想的な光景です。 薬師寺や東大寺、春日大社の御用達である和菓子の「樫舎」も奈良町にあります。この季節のおススメは「葛焼き」。今では珍しい“手漉し”で作られる“赤餡”と、吉野の極上本葛で作られる逸品です。

茜染め

今年8月18日付の奈良新聞にこんな記事がありました―――「鹿の角、天平の茜に染まる。最強のお守り。」これを見たくてやってきたのは、奈良市内からバスで20分ほどの大和郡山市。天然染色研究家の宮崎明子さんのお宅です。






春日大社に伝わる「義経の大鎧」や正倉院の宝物に残る日本古来の「茜染め」に魅せられ、室町時代に途絶えたという技法を独学で再現しました。江戸時代、徳川吉宗も憧れ復活しようとしたそうですが、うまくいかなかったという“幻の染め”です。甦った「茜染め」に、何か“パワー”をもらったような気持ちになりました。

清澄の里・粟

奈良には「大和野菜」と呼ばれる伝統野菜があります。それを中心に、世界各地の伝統野菜を育て、食べさせてくれる店が奈良市郊外にあります。「紫とうがらし」、「縞瓜」、「大和芋」といった大和野菜の素材を生かした料理の数々に舌鼓。初めて食べる野菜に、大感激の2人です。

東大寺

内山理名さんが「奈良に行ったら必ず訪れる」という東大寺大仏殿。その大きさに圧倒された2人は、そこから長い長い石段を登り、「修二会」で知られる「二月堂」を訪れました。ここは知る人ぞ知る絶景ポイント、2人の目に飛び込んできたのは、奈良盆地を赤く染めて沈んでゆく夕日。この瞬間だけに感じられる、至福のときです。





大極殿

かつての都の中心、平城宮跡に復元された「大極殿」。殿内の中央には天皇の玉座である「高御座(たかみくら)」が鎮座しています。国家儀礼など重要な行事が行われていた場所で、あの聖武天皇が即位したのも、この場所だったそうです。






ここで2人は、当時の衣裳に身をつつみ、今回の旅を振り返ります。秋の奈良で見つけた様々な「赤」、美しい色に包まれた華やかな時代・・・悠久の時を超えて輝き続ける奈良の魅力の一端に触れることができたような気がします。

  1. フォトギャラリー 奈良の情景をお楽しみください。

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