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トップページ > 撮影日記ページ |
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撮影日記1
ほっほぉー。 さて、やや強引にスタッフ紹介をさせてもらったが、とにかくパゴダを目にして俄然テンションの上がった僕らは、勢いそのままにヤンゴンの街へと繰り出した。雑然とした町並みにイギリス植民地時代の面影を残す西洋風の建物、そしてそれらの背後にそびえる黄金のパゴダ…、なかなか奇妙な光景が広がっている。何より目を引くのが通りを行き交う人々の姿だ。まず彼らの格好なのだが、男性も女性も大半の人がスカートのような腰巻を穿いている。これはロンジーという民族衣装だそうだが、上はワイシャツだったりTシャツだったりと現代の装いに対し、下だけ何故が民族衣装を身に着けている。そして最も注目すべきは女性や子供がしているお化粧だ。タナカという木を磨り潰して出来た白い粉を顔に塗っている。日焼けを防いだり、油を吸収したりといった効果があるようだが、概ねおしゃれの一つとして塗られているようだ。ミャンマーは途上国とは言え、少なくともヤンゴンには自動車も走っていればパソコンだって携帯だってiPodだってある。それなのにこうした伝統的な文化がいわばファッションとして成立しているのは、何とも興味深い。 初日からこんなに不思議な光景を見せられては、いやがうえにも今後への期待は高まっていく。いや、いかんいかん。過度の期待は禁物だ。なにせミャンマーは積極的に情報発信するような国ではないので、事前に把握出来ていない事が多い。この先何が待ち受けているか…
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撮影日記2
列車とはこんなにも揺れる乗り物だっただろうか。 凄まじい揺れを座席で楽しみながら窓の景色を眺める。覆いかぶさる木々が視界を遮っていたかと思うと、パッと田園地帯が広がり、そして小さな集落が現れる。初めて見るはずなのにどこか懐かしい景色。 車内に目を移すと、通路を隔てた隣の席に150cmほどの小男と2m近くの大男が並んで座っている。この二人、実は今回のロケの鍵を握る重要人物たち。小柄な方は鉄道省の役人。元は第一線で活躍していた軍曹で、戦地で6発の銃弾を浴びながらも生還を果したという奇跡の男だ。この方の鉄道関係における力は絶大で、駅に停まる度に関係者たちが最敬礼で出迎える。おかげで駅に到着する際、常に違和感がカメラに映りこむ。そして大柄な方は現地コーディネーターのミンミンさん。彼は唯一役人と対等に話が出来る貴重な人物で、用心棒の役目も果している。 この二人に加え、役人の世話役が区間ごとに同乗してくる。だから僕ら撮影スタッフとは別にいつも4〜5人の集団が形成されているのだが、彼らは本当に良くしゃべり良く笑い合う。ミャンマー人は結構冗談を言うのだが、不思議な事にユーモアのセンスが日本人と良く似ている様に感じる。例えば、役人は髪が薄い(というかほとんど無い)のだが、曇り空を見て「私の頭は晴れているのになぁ」とつぶやいたり、いつもより早めに撮影を終わらせた時などは(ミャンマー語で)「感謝感激雨あられ」と口ずさんだりする。頭の特徴を生かした自虐的ギャグが通用していることも新鮮だったが、「感謝感激雨あられ」という言葉が飛び出た時は驚いた。もともとこの言葉は戦時中に雨やあられのように銃弾が飛び交う様を「乱射乱撃雨あられ」と言い、それをもじって使われる様になったもの。そんな日本独自の語呂合わせの言葉が何故にミャンマー語で存在しているのか…、まったくもって謎である。
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撮影日記3
バスに揺られながら、日が昇る前のバガンの街を走る。バスと言ってもトラックの荷台を客席に改良したもの。ミャンマーでは良く見かける乗り物だ。それにしてもこの国の道路は穴ぼこだらけでお尻が痛くなる。少なくとも車の椅子は木製ではなくクッションのきいたものにすべきではなかろうか。 そんな愚痴をこぼしながらも、内心僕はワクワクしていた。なぜなら、今から今回のロケ最大の楽しみである、熱気球での空撮を行なうからだ。 ここバガンには2,000を超す仏教遺跡が点在していて、その遺跡群は世界三大仏教遺跡の一つにも数えられている。遺跡のほとんどは10〜12世紀のわずか200年の間に建造されたと言うから驚きだ。もともとここにはピューという先住民が生活していたそうだが、西暦849年、中国からやって来た南詔の人々によって支配され、バガン王朝が築かれた。この南詔の人々というのがいわゆるビルマ族だ。ビルマ族はこの地に仏教を広め、多くのパゴダや寺院を造っていったのである。 さて、車はもはや道なき道を進み、そして熱気球の離陸場に到着した。既に多くの観光客が集っている。この熱気球は遺跡群と日の出を一緒に楽しめるバガンで大人気の観光アクティビティなのだ。乗り込むのは僕と築館カメラマンと通訳のチョーさんの3人。チョーさんは日本に10年間住んでいたらしくなかなか流暢な日本語を話すが、何よりとにかくおしゃべり。ロケの疲れが溜まっているのか、目は虚ろだが口は絶えず動いている。チョーさんのおしゃべりに付き合いながら、いよいよ離陸の時がやって来た。パイロットの合図と共にブワッとゴンドラが浮き上がる。見送る人たちの姿がみるみる小さくなっていく。そして僕は見た。一生忘れないであろう人生最高の景色を…。 広大な平原にそびえ立つ無数の仏教遺跡。朝日に照らされたパゴダがキラキラと輝き、崩れかけた寺院が朝もやに包まれて幻想的な光景を生み出している。僕はもとより、さすがのチョーさんも口を開けたまま何もしゃべらない。言葉を失うとはこのことを言うのだろう。気球は遺跡の間を縫う様にして進む。その影に驚いた鳥たちがバタバタッと一斉に飛び立っていく。何だか空想で作った世界の中を浮遊している様な不思議な感覚…。 ちなみにこの熱気球、飛行時間40分程で料金およそ3万円。まぁ高いか安いかは置いといて、空の旅としてはかなり満足できるものではないだろうか。機会があれば是非お試しあれ。
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撮影日記4
海外ロケをする上で楽しみとなるのは、何と言っても食事。特に車窓のような長期のロケともなれば、毎日のモチベーションを保つ為の重要な活力剤にもなってくる。だが今回に限っては違った。食事によって僕らは大変な苦労を強いられることになったのである。 誤解のないよう言っておくが、ミャンマーの料理は結構美味しい。ジャンル的には中華料理やインド料理に近く、お米が主食なだけあってご飯に良く合うおかずが多いのも僕好み。問題なのは“油”である。ミャンマー料理にはかなりの油が使われているようで、観光ガイドブックでも注意されているほどだ。もっともちゃんとしたレストランや食堂で食べればそれほど問題ないのかもしれないが、僕らは1日中列車に乗っているので、どうしても途中駅にある屋台や物売りから食料を調達する事が多くなる。メニューは主に焼ソバ、ビーフン、チャーハンの3種類。どれも日本人には親しみのあるものばかりだが、これがとにかく油っぽい。最初の内はおいしく頂いていたのだが、3日も食べ続けると胃がおかしくなってくる。ロケも中盤に差しかかった今、僕とおじいちゃん(撮影助手の宇土くん)はすっかりお腹を下してしまっていた。ただ一人築館カメラマンだけは初日から変わらぬ食欲を保っている。一体この人の胃袋はどうなっているのか…。 この日は朝3時半ホテル出発という過酷なスケジュール。真っ暗の中ロケ車の前に行くと、頬はこけ、目は虚ろ、顔から血の気が失せ紫色の唇をしたおじいちゃんの姿が…。思わず悲鳴をあげそうになった。完全なる食あたり。お腹の具合も悪い中、疲労もピークに達したところに、昨日飲んだライムジュースが追い打ちをかけたようだ。 とりあえずおじいちゃんには休んでいてもらいロケを進める。役人が“飲む点滴”(ブドウ糖入りの水)を用意してくれたのだが、そもそもお腹を下しているおじいちゃんにとってそれを飲むのはかなり辛いこと。謎の日本人が青白い顔でふらふら席とトイレを行ったり来たりする姿に、他の乗客たちもざわつき始めている。 はてさてこんな状態で無事にシュエニャウンへ辿り着く事が出来るのだろうか。場合によってはスケジュールを組み替えないといけないかなと思っていたその時、ある男が立ち上がった。そしてこの男が、これからとんでもない活躍をみせることになる。つづく…。
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撮影日記5
改めて言う事でもないが、車窓ロケは多くの人に支えられて成り立っている。今回は特にバックアップ体勢が整っており、円滑にロケを進める事が出来た。その立役者の一人が、タイから同行してくれたコーディネーターの斎藤さん。日本語に含まれる微妙なニュアンスをくみ取って現地コーディネーターのミンミンさんに伝えてくれるので本当に助かる。そして前回の日記で書いた「ある男」とは、この斉藤さんのこと。彼はかつて撮影スタッフとして働いていた経験があり、食あたり中のおじいちゃん(撮影助手の宇土くん)に代わり撮影助手となってくれたのだ。そのおかげで大きな問題もなく撮影する事が出来、おじいちゃんも治療に専念することが出来た。本当にありがたい事である。 途中駅で築館さんと喉の乾きに絶えていた時、満面の笑顔で瓶ジュースを持って来てくれた若い駅員。きっとここぞという時にとってあったのだろう。すっかり炭酸が抜けて何だか薬のような味がしたけど、とても美味しかった。ロケ中僕の両手がふさがっているのを見て、すかさずモニターを僕に見えるように持ってくれたおじさん。礼を言うとニッと屈託のない笑顔を見せるが、驚く事に口の中が真っ赤に染まっている。血を流しているのかと思ったが、その正体がミャンマーの噛みタバコ(キンマの葉に石灰やびんろうなどを混ぜたもの)によるものだと気付き、思わず笑ってしまう。
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