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「ドイツ撮影日誌1」

「4月12日(水)」
お待たせしました!「哀しき中年撮影隊」の隊長、久々の出場です。前回は4年前のフランス篇。日韓ワールドカップの年だった。今回はドイツ・ワールドカップ。厳しい予選を戦い抜き、見事本選出場を果たした今年52歳の私。老骨に鞭打ち、まずはフランクフルトからカイザースラウテルンへ向かう。日本代表の予選リーグ初戦、対オーストラリアの試合が行われる町である。が、朝から雨。ドイツロケ、そして日本代表の前途は多難か。それにしても全然盛り上がっていない。フランクフルト中央駅の入り口にサッカーボールをあしらった電光掲示板があり、開催まであと58日と表示されているが、まったく目立たないし汚れきっている。駅構内の書店にかろうじてキャラクター人形や各会場の絵葉書が置いてあるものの、買う人はゼロ。“がんばれ、ジーコ・ジャパン!”という垂れ幕もない。こんなことでいいのか、ドイツ!あ、でも新幹線ICEの車体にシンボルマークを発見。よしよし、そうでなくてはいけない。気分が少し盛り上がり、午前9時54分発のICEに乗り込む。車窓は雨。窓もあかない。お客も少ない。乗車時間はたった1時間半。番組を作るうえでは難しい。でも日本代表、いや中年撮影隊は負けない。乗っていたおじさんたちとサッカー談義に花をさかせる。「今回のドイツは自国開催で予選がなかったから、勝ち進むのは難しい。日本はけっこういいとこまでいくんじゃないの」という好感触を得た。

11時29分、カイザースラウテルン着。うーん、ここも盛り上がっていない。日本語の表示やパンフレットもない。試合当日はサムライ・ブルーのユニホームを着た日本人で埋め尽くされるというのに、これでいいのか、カイザースラウテルン。駅前のカフェでサンドイッチとコーヒーの昼食をとった後、スタジアムへ向かう。駅のすぐ裏手の丘の上にあり、驚くほど近い。歩いて10分ほど。アクセスだけはドイツ国内の12会場の中で一番いいのではないか。スタジアムはボロイけどね。ちょうど2ヵ月後の6月12日キックオフ。オーストラリアをたたきのめせ、ニッポン!スタジアムの関係者に「チケットください」と頼んだが、一笑にふされる。市内の俯瞰を撮影するため市役所の屋上に上がった時、案内してくれた女性職員が「私チケット持ってます」だって。拉致して奪いとろうと思ったが、やっとのことで思いとどまる。ロビーに記念撮影用のボードを発見。ゴールに喜ぶ3人のサッカー選手の顔が抜けていて、裏から顔を出せば自分が選手になったように見えるもの。ヤケクソで撮った。こうして、またトホホな旅が始まったのである。

ディレクター 福本 浩
フランクフルト中央駅とICE
フリッツ・ヴァルター・シュタディオン
記念撮影用ボード
「ドイツ撮影日誌2」

「4月13日(木)」
今日はローカル線の列車を乗り継いでカイザースラウテルンから温泉保養地として有名なバーデン・バーデンへ向かう。天気はぱっとしなかったが、地元の人々の飾らぬ姿、いい表情にたくさん出会えて楽しかった。列車に乗り込むや否やシャンパンをあけ、サラミや白ソーセージをパクつく老人グループ。これからハイキングに行くというのだが、そんなに飲んで大丈夫か。別の車両にはシュトゥットガルトの動物園に行くという子供たちが大はしゃぎ。ナンバープレートを手に新車を取りに行くという親子。ドイツ代表のGKカーンのレギュラー落ちに心を痛めるサポーター。マフラーを編んでいるおばあさんに「誰のために編んでるの?」と聞いてみたが、笑って教えてくれなかった。職業学校に通う大工やタイル職人志望の若者たちも、授業で作った作品を手に乗り込んできた。日本ではあまり見かけなくなった折りたたみ式の物差し、「折り尺」を持っていてちょっと懐かしくなった。いろんな人生が今この時だけ一緒に同じレールの上を同じ方向に向かって走っている。何だか不思議な気持ちもした。

ドイツのローカル列車には自転車が持ち込める車両が連結されている。座席は日本の通勤電車のように両側の窓に沿って横一列に並び、3席に1本の間隔で自転車を止めるベルトが付いている。
料金は1台に付き約500円とちょっと高めだが、持ち込んでくる人がホントに多い。ドイツでは今、多くの町で自動車より自転車の通行を優先する政策が進められていると聞くが、そのせいか。市の中心部に一般の自動車が乗り入れることを禁止したり、自転車専用道路を増やしたりしているのだ。今回訪れたフライブルクは60年代からその政策に取り組んできた町で、市内は市電と自転車と歩行者の通行が優先され、排気ガスの匂いがせず、毎日が歩行者天国という感じ。のびのびと歩けて気持ちよかった。日本でもそういう町が増えてくれればと思う。とはいうものの、その自転車専用道路で今回困ったこともあった。列車の走りを撮影する際、郊外の牧草地にもサイクリング用の道路があり、大抵その道でしか線路に近づけなかったりする。当然、撮影車は通れない。機材を担いで延々歩かされるはめになる。そして雨もよく降る。大粒の雹も降った。さらにドイツの畑の土は粘着質。その上を歩いた日には靴の裏に土がべったりとくっつき、後始末が大変。車窓のロケはただ列車に乗っていればできるというものではないのである。すでに30代の半ばにして電車の中で小学生に席をゆずられ、今回ドイツ人のドライバーに65歳と言われるまでに老人力がついてきた私。今年が最後の出場になるかも知れない。いや2010年の南アフリカ大会までは何とか……と思いつつロケ3日目を終えた。
ディレクター 福本 浩
老人グループ
カールスルーエ中央駅
車内で出会った少女
「ドイツ撮影日記3」

「4月16日(日)」
フライブルクからボーデン湖畔の町コンスタンツへ向かう。車窓は雪が残る「黒い森」、ドナウ川にボーデン湖と変化に富んでいるのだが、いかんせん天気がよくない。朝晴れていても次第にくもってきて午後には雨、そして夕方にはまた少し日が差すと言うぐあいに天気がコロコロ変わる。編集で苦労しそうだ。途中、ドナウエッシンゲンに立ち寄り、ドナウの泉を撮影。かつての領主が住んでいた城館の庭にその泉はあって観光名所となっているのだが、正確にはドナウの支流の泉で源泉とはいえないらしい。それでもローマのトレビの泉よろしくお金を投げ入れる観光客が後を絶たない。この日は雨が降ってきて湧き出る水がうまく撮影できなかったので、翌日また撮影した。夕食に春の到来を告げる旬の味、白アスパラガスを食べた。日本では生のアスパラはグリーンのものしかなく、白アスパラは缶詰でしか見たことがない。しかもドイツの白アスパラはぶっとい。なかなかうまかった。食べ過ぎると、かなりオシッコが臭くなるのでご注意ください。本日の乗車時間は合計2時間23分。乗り換え2回。細切れの列車の旅はこれからも続く。

ディレクター 福本 浩
ラドルフツェル駅
白アスパラガスの料理
ドナウの泉
「ドイツ撮影日記4」

「4月18日(火)」
コンスタンツからボーデン湖をぐるりと半周しリンダウへ。朝方は雨模様、午後は晴れてきた。リンダウには「車窓」の放送1000回を記念するスペシャル番組の撮影で来た事がある。原田知世と一緒にオランダ、ドイツ、スイス、イタリア、スペイン、フランスを列車で旅した。それが「車窓」と関わった最初の仕事。私はまだ30代だった。遠い昔だ。「車窓」は今年の6月で20年目に突入、秋には放送7000回を迎えることになる。リンダウのカフェでソーセージ入りのサンドイッチをほおばりながら感慨にふける。町の風景は何となく覚えているのだが、以前は何を撮影したのか全く覚えていない。あの頃はデジカメも携帯もなかったのに、今や海外からも日本に通じる携帯がしょっちゅう鳴り、老眼鏡をかけながら撮った写真をその場で確認し、帰国後はビデオテープを使わずコンピューターで編集。便利さを手に入れた代わりに、ものすごいスピードで失ったものがある。それは番組を作るゆとり。スケジュール、予算、そして何が起こるかわからないという撮影現場を何より大事にするという気持ちのゆとり。「車窓」にはまだそれが残っている。だから長く続いているのだろう。夕方、リンダウへ向かう途中で列車を乗り換えたフリードリヒスハーフェンという長たらしい名前の町に戻り、ツェッペリン博物館を撮影。この町は20世紀の初頭、大型飛行船の製造の一大拠点だった。大西洋を横断しニューヨークの近くで謎の爆発事故を起こしたヒンデンブルク号のキャビンが実物大で復元されている。でかいの一言。この博物館を紹介する回は、レッド・ツェッペリンの曲を使おうと心に誓う。

ディレクター 福本 浩
リンダウへ向かう列車
ユニークな窓の列車と乗客
ツェッペリン博物館 飛行船の実物大キャビン
「ドイツ撮影日記5」

「4月19日(水)」
リンダウからロマンチック街道の終着点フュッセンへ向かう。周囲の風景はどこへ行っても牧草地。これがくさい!車内にまで匂ってくる。町の中、ホテルにいても匂ってくる。今は長い冬が終わり、家畜を放牧するための準備をしているところ。牧草を育てるために牛や豚の糞尿を一斉にまいているのだ。将来匂いも伝えられるテレビができたとしたら、まっさきにカットされる車窓シーンだ。でも何だか懐かしい気持ちになる。若い人にはわかんねえだろうなあ。途中、ビーセンホーフェンという駅でまた乗り換え。列車を待つ間、駅前に1軒だけあったレストランで昼食をとる。初老のイタリア人が経営する店。以前来た時よりイタリアンが増えている気がする。ありがたいことだ。一人しかいないので時間がかかるかなと思ったが、若い女性がやってきて厨房で手伝い始めた。娘と思ったが通訳のガービーさんいわくドイツ語に訛りがあり外国人らしい。東欧諸国からの出稼ぎが多いらしいが彼女もその一人か。パスタとピザを頼んだがうまかった。食事中、2人が何やら深刻な顔で話し合ってる。不倫の匂いがプンプン。でも違った。おやじさんはもう一人店員を雇いたいらしい。「俺も年だからね、最近つらいんだよ。」「一人増やして給料払えるの?今日なんて客は変な日本人だけじゃないの。」などと、インチキ吹き替えごっこを楽しむ。カメラマンの中村氏はこの分野の達人である。フュッセン到着後、ノイシュヴァンシュタイン城へ。森の中にあるイメージだったが、実際は山の中腹にあり、崖の上に立っている感じ。よく見る写真の撮影ポイントまで、かなり急勾配の山道を15分以上歩かされる。これも誤算。きつかった。確かにきれいな城ではあるが、映画のセットのような、本物なのにイミテーションのような、不思議な城である。

ディレクター 福本 浩
フュッセン駅に到着
フュッセンの街並み
ノイシュヴァンシュタイン城
「ドイツ撮影日記6」

「4月20日(木)」
フュッセンの周辺で列車の走りを撮る。快晴で気持ちがいい。雪を抱いたアルプスと緑の牧草地に真っ赤なボディの列車がよく似合う。「雨や曇りの絵の方が映画っぽい。おとなの車窓だぜい」と強がりを言ってきたが、やはり晴れの絵は華やかでいい。その後フュッセンから車で40分ほど走り、世界遺産のヴィース教会を撮影。天井に描かれたフレスコ画は「天から降ってきた宝石」と讃えられている。ハイ、おっしゃる通りです。文句なく美しい。1738年に涙を流す奇跡を起こしたというキリストの木像は……全然崇高な感じはなく、むしろ俗っぽい造りだった。なんていうと神様に怒られるかも。夕方、ブッフローエから列車に乗り込みミュンヘンへ。夕日がきれいだった。夕日に崇高な思いを抱くのは古代太陽信仰の遺伝子が残っているせいか。ミュンヘンのホテルにようやく入れ歯が届く。出発の前夜、赤坂で別の番組の音入れ作業があり、飛行機が朝早い便だったのでホテルに泊まった。そこに忘れた。さすがは「哀しき中年撮影隊」の隊長だけのことはある。あっ言っとくけど総入れ歯じゃないからね。1本だけの部分入れ歯だからね。そこんとこよろしく。まあとにかく、その入れ歯が10日かかって届いたのだ。普通の封筒に入って。このネタがどれほどスタッフの笑いを誘い、心を慰めたか知れない。もうちょっと届くのが遅れて欲しかったなあ。ハガキにセロテープで貼って送ってくれればもっと面白かったのに。
書いてしまった。どうせ削除されるだろう。え?そのままアップした?カミさんに怒られるかも。
ディレクター 福本 浩
ヴィース教会
ミュンヘン行きの車窓
ミュンヘン中央駅
「ドイツ撮影日記7」

「4月22日(土 )」
ミュンヘンから車で移動。ドイツ・アルプスの雪山に囲まれたガルミッシュ・パルテンキルヒェン周辺で列車の走りを撮影。車に乗る際に足を滑らせ、肘と臀部をしたたか打った。乗用車ではなくワゴン車なので段差がけっこう高い。しばらく身動きできなかった。幸い頭を打たなかったので大事には至らなかったが、首も軽いムチウチ状態。最近、意識と身体の動きとが微妙にずれる時がある。去年もスペインロケで馬車から落ち、腰を打った。来てるなあ、何かが。まあディレクターがどんなにケガしても撮影には何ら支障はない。インドロケで歯が痛み出し歯医者へ行ったこともある。器具は旧式だったが腕は確かだった。こわかったけど。え?そんな話ばかり書いてないで撮影のことを書けって?ハイハイわかりました。逆走列車について。列車の走りを撮っていて一番がっくりくるのが逆向きに走る列車である。列車を引っ張ってきた機関車が、折り返しの駅からそのままバックしていくのだ。最後尾に連結されていた客車に運転室があり、帰りはそれが先頭になる。機関車の付け替え作業を省いた合理的なやり方だが、映像は変なものになる。逆回で見ているようだ。撮った映像を逆回すれば正常な走りになる……悪魔のささやきが聞こえてくる。あ、ダメだ。鳥がフレームの中に入ってきちゃった。使えない。雨の中1時間ぐらい待ってこんな走りしか撮れない時もある。笑うしかない。ドイツに来て2週間。この辺りが一番気がゆるむ時。食欲も落ちてくる。夕食はサラダとパンとスープだけ。一人だけサラダバーを頼みウエイターの目を気にしながら皆でつっつく。哀しき中年撮影隊の夜。
ディレクター 福本 浩
ドイツ・アルプスへ向かって南下する列車の車窓から
ガルミッシュ・パルテンキルヒェン駅
まだ雪が積もるドイツ・アルプスと列車
「ドイツ撮影日記8」

「4月24日(月 )」
今日は空撮。ガルミッシュ・パルテンキルヒェンからドイツ最高峰、標高2,962mのツークシュピッツェへ向かう登山列車をヘリコプターから撮影。昨日は雨だったので今日に延ばした。快晴!しかしヘリコプターに問題が多々あった。右側のドアしかはずせない。列車を並走撮影しようとすると列車の左側に回らなければならないが、山が迫っているので高度が下げられず真上からしか撮れない。3枚ではなく2枚羽根なので小回りもきかない。パイロットは軍人上がりのイケイケおじさんではなく、実直な中高年サラリーマンタイプ。融通はきかない。さらに路線の最後は4.8kmも続くトンネルになっている。あまりいい映像にはならなかった。その後、ミュンヘンからオーストリア国境の町ミッテンヴァルトへ向かう列車も撮影したが、またもトラブル。ある駅で列車が止まったまま動かない。その1キロぐらい先にはミュンヘンへ戻る列車が止まっている。この路線は単線だから上下の列車は決められた駅ですれ違わなければならない。推測だが、ミュンヘン行の列車がすれ違うべき駅で待たずに来てしまったのではないか。線路のポイント切り替え(多分コンピューター制御)が、ちゃんと行われるまでお見合いを続ける他ない。我々にとってはいい迷惑である。ヘリコプターのレンタル料金は分刻み。タクシーの運賃メーターに似た音が、頭の中で次第に速く大きく鳴る。結局15分ぐらい待っただろうか。ようやく列車が動き出し撮影を始めた。が、周囲に家が多く高度を下げられない。これまたいい映像にはならなかった。深いため息と共に地上へ戻り、ランチ&ビール。飲まずにはいられなかった。
ディレクター 福本 浩
ヘリコプターに乗り込む
バイエルン・ツークシュピッツ鉄道
ドイツ最高峰ツークシュピッツェ
「ドイツ撮影日記9」

「4月28日(金 )」
ニュルンベルク〜ノイシュタット〜シュタイナッハ〜ローテンブルク、3回列車を乗り換え車内と車窓を撮影。朝から雨模様。ジャズがよく似合う「おとなの車窓」だ。朝8時3分ニュルンベルク発の列車に乗っていたビジネスウーマン。靴墨持参で靴をみがき、ヨーグルトとパンで朝食、CDプレーヤーの電池を交換し音楽を聴きながら仕事の資料を読み、携帯のメールをチェック。 列車の中で朝の準備をすべてやっていた。ただ化粧だけはしない。ドイツの女性にとって人前で化粧をするのはものすごく恥ずかしいこと。娼婦に見られるらしい。某国の列車ではよく化粧をしている女を見かける。付けまつ毛(最近はマスカラというらしい)まで目の前で付けられた日にゃ、おじさんは殴りたくなる。携帯を神社の御札のように見つめるやつらがズラリと前に並んだ日にゃ、情けなくて悲しい。日本で「車窓」を撮影し外国人に見せたらどうなるだろう。それはそれで面白い番組にはなるが、恥ずかしい。朝一番は乗客が少なかったので、もう一度ノイシュタットからローテンブルクまで乗り直す。今度は学校帰りの子供たちがどっと乗ってきてにぎやか。ハシが転んでもおかしい年頃。見てると気分が少し華やぐ。さてローテンブルクだ。日本人には一番人気があるという中世の町。何でや?というのが第一印象。観光地になってしまうと、すべてがウソ臭く見えてしまう。天気もどんよりとしていたから、余計にがっかりした。それでも聖ヤコブ教会で見た、リーメンシュナイダーの「聖血祭壇」には魅了された。木彫りというのもあるのだろう。鋭いタッチで掘り込まれた最後の晩餐の場面は、弥勒菩薩像や百済観音像に通じるような高貴さと迫力を感じさせた。虫食いがあるのも、すごくいい。そして中世犯罪博物館。魔女裁判に使われたという拷問椅子、不貞を働いた女性を懲らしめる棺桶のような「鉄の処女」、道徳に背いた者には「辱めのマスク」をかぶせ市場でさらし者にするという。町並より、よほど中世が感じられた。夕方、小雨の降る中、寒さにふるえながら列車の走りを撮影。52回目の誕生日は、こうして過ぎた。
 
ディレクター 福本 浩
ローテンブルクへ向かう列車
乗り込んできた小学生達
リーメンシュナイダー「聖血祭壇」
「ドイツ撮影日記10」

「5月1日(月 )」
ドイツロケの最終日。フランクフルトの保存会が運営する蒸気機関車に乗り込む。フランクフルトからおよそ100キロ先のヴェスターブルクまでを往復する1日だけの旅。ヴェスターブルク到着後、リンブルグ〜ヴェスターブルク間だけ、もう1度往復するという変則的なスケジュール。
困ったことがあった。帰りは蒸気機関車が逆向きで客車を引っ張っていくという。お尻を先頭にして走るという何ともしまりのない格好だ。いい走りの映像を撮るチャンスはフランクフルト→ヴェスターブルク、リンブルク→ヴェスターブルクの2回しかない。

★フランクフルト→イドシュタイン→リンブルク→ヴェスターブルク
★ヴェスターブルク→リンブルク/リンブルク→ヴェスターブルク
★ヴェスターブルク→リンブルク→イドシュタイン→フランクフルト

いつ、どこから列車に乗り込んで乗客や機関室の内部、車窓を撮るか、そしていつ走りを撮るかの作戦が必要になった。それで前日ヴュルツブルクからフランクフルトに到着した後、もう夕暮れだったが可能な限りロケハンした。蒸気機関車のフランクフルト中央駅出発は朝9時。もしここで列車の出発を撮り、車に乗ってラッシュの街中を抜け、先回りできる一番近い駅はイドシュタイン駅。行ってみたが、その周辺にいい走りが撮れる開けた場所がない。仮にイドシュタイン駅まで列車に乗り、そこで降りて車に乗り換え先回りできる場所、いい映像が撮れる場所はどこか?薄暗くなり雨も振り出す中、車で走り回りながら探した結果、リンブルクの辺りにいい場所を見つけた。その先ヴェスターブルクまでのロケハンは暗くなってしまいできなかった。雨にもかかわらず、さすがはドイツ車、アウトバーン(高速道路)を200キロで走った。未体験ゾーンに突入し身体がこわばった。空に飛び上がりそうな浮遊感があった。さて当日はどうなったか……放送を見れば何となくわかるかも。終着駅ヴェスターブルクに到着するシーンは撮る事ができなかったことだけを記すことにする。
ディレクター 福本 浩
フランクフルト中央駅から出発する蒸気機関車
車内で出会った姉妹
ヴェスターブルクへ向かう蒸気機関車

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